シナリオ傾向:シティ、現代、ゲスプレイ
推奨人数:3人~
戦闘:有り(銃火器、重火器などの使用を想定)
推定プレイ時間:2~3時間
難易度:ふつう
システム:クトゥルフ神話TRPG
推奨技能:戦闘や交渉技能のほか、〈砲〉〈重機械操作〉〈パラシュート〉〈重火器〉〈操縦:航空機〉などを使用する機会がある
なお、戦闘技能は銃火器を推奨する。男性が1人いたほうがよい。
「硫黄党」は世界征服を目論むどこにでもある暴力団だ。
硫黄党の一員である探索者は、とある本を手に入れるための取引へと向かう。
探索者たちは無事に取引を終了させ、世界征服の儀式を完遂させることができるのか?
NPC
硫黄龍三
硫黄党の組長で、世界征服を目論んでいる。
50歳の男性。黒いオールバックの髪と立派な体格。
中山晴彦
STR13 CON14 POW12 DEX10 APP12 SIZ12 INT13 EDU15 HP13 MP12 SAN60アイデア60 幸運65 知識75 DB1d4
技能
こぶし70、応急手当60、聞き耳60、追跡50、目星70、運転60、機械修理40、言いくるめ50、説得50、心理学50、法律60、歴史40
鈴城亮
STR14 CON11 POW5 DEX14 APP9 SIZ11 INT12 EDU12 HP11 MP5 SAN25 アイデア60 幸運25 知識60 DB1d4
技能
キック60、マーシャルアーツ60、隠れる35、聞き耳75、目星50、運転40、言いくるめ70、経理30、コンピュータ50
横島奈央
STR10 CON4 POW14 DEX10 APP12 SIZ13 INT13 EDU21 HP9 MP14 SAN70 アイデア65 幸運70 知識99 DB1D4
技能
精神分析71、図書館75、信用75、説得55、ドイツ語78、医学90、経理50、生物学70、薬学60
白鳥翔
STR9 CON13 POW15 DEX12 APP17 SIZ12 INT18 EDU17 HP13 MP15 SAN75 アイデア90 幸運75 知識85 DBなし
技能
ライフル38、精神分析81、図書館80、自動車70、航空機70、信用80、フランス語50、バイオリン80、天文学41、法律40
丹波貞義
STR11 CON12 POW15 DEX10 APP14 SIZ15 INT16 EDU17 HP14 MP15 SAN75 アイデア80 幸運75 知識85 DB1d4
技能
鍵開け80、隠れる75、聞き耳75、追跡70、図書館75、目星75、変装77、言いくるめ75
安井玲人
STR12 CON11 POW13 DEX11 APP10 SIZ16 INT14 EDU16 HP14 MP13 SAN65 アイデア70 幸運65 知識80 DB1d4
技能
杖75、図書館75、目星75、機械修理77、説得80、オカルト50、電子工学75、物理学70
天音瑠偉
STR13 CON11 POW16 DEX10 APP16 SIZ10 INT10 EDU14 HP11 P16 SAN80 アイデア50 幸運80 知識70 DBなし
技能
ナイフ55、回避50、応急手当50、聞き耳65、目星45、作曲50、言いくるめ50、説得55、歌唱55、心理学65
MAP
白鳥の家
本シナリオの探索者は「硫黄党」に所属するヤクザ、あるいはその関係者とする。硫黄党は構成員10人ほどの暴力団。
探索者たちは組長である硫黄龍三に呼び出される。龍三は50歳ほどの男性で、黒いオールバックの髪と立派な体格が特徴。
龍三は探索者たちに、明日に行われる海外組織との取引を任せると伝える。伝えられる情報は以下の通り。
・硫黄党が10億円を、相手が一冊の本を出す
・明日の深夜2時に港で行われる
・世界征服のため、本に書かれている魔法陣を知る必要がある
・相手組織は裏社会でもほとんど知られておらず、詳細は不明。ただ「トライアド」と呼ばれている
・魔法陣以外の準備は出来ているので、最悪の場合は魔法陣だけでも入手すること
・取引が終わればすぐに儀式を行うので楽しみにしておくこと
・儀式が終わったら好きな女(男?)をあてがってやるから好みを教えろ
探索者たちに10億円を渡すと、龍三は「近頃は組の周りを嗅ぎまわる妙なやつも増えているらしい、お前らも気をつけろよ」と話す。
その後、探索者たちは港へ向かうことになる。武器などを要求された場合、現実的な範囲で用意する。
※このシナリオでは探索者たちを邪魔するNPC探索者多数登場する。彼らを正義感のあふれる立派な人間として演じるとよいだろう。
港は暗く、人の気配は全くない。ただし、港には取引を阻止すべく中山晴彦という男が隠れている。
中山を発見するためには〈目星〉や〈聞き耳〉。成功すれば、影からこちらを見ているコートを着た探偵風の男(中山)を発見できる。
探索者たちが警戒するようなそぶりを見せている場合は、中山を発見するためのロールを行う。
中山は発見されたことに気付くと直ちに逃亡しようとする。逃げられないよう追い詰めた場合は中山との戦闘開始。
捕らえて話を聞こうとしても、彼は口が堅く「散歩していた」としか話さない。うまく尋問できた場合は、以下の情報を話す。
・自分は世界を滅亡させようとしている硫黄党の企みを阻止するために来た。近くには2人の仲間がいて20分おきの連絡が途絶えると駆けつけてくる。
・俺たちとは別に組に向かっていったグループもいる
・依頼者は天音瑠偉という女性で、両親を硫黄党に殺された
中山を捕らえてしばらくしたところで、あるいは取引が終了する寸前で次のイベント「探索者の襲撃」へ。
2時になると港にはクルーザーが向かってくる。クルーザーからは怪しげなローブを着た5人の男が降りてくる。
彼らは一言も話さず、本が入っていると思われるスーツケースを持ちながらこちらへと近づいてくる。
本と10億円の交換が行われたタイミングで、次のイベントへ。
取引現場に車が突っ込んでくる。〈幸運〉に失敗した場合、車に接触する可能性がある。
取引終盤にイベントが発生した場合は、本を持っている探索者に向かって車が突っ込んでくる。〈回避〉に失敗すれば1D6ダメージ。
ダメージを受けた場合、本を落としてしまう。
車には二人の男女が乗っている。中山と同じく探偵風の男である鈴城亮と、医者のような見た目をしている横島奈央である。
彼らは中山の救出や本の奪取を目的としている。中山が死亡している場合、貴様ら……!などとつぶやく。
適当に彼らを動かし、PL達の邪魔をすること。戦闘やDEX対抗などを行えばよいだろう。たいていの場合、彼らはハチの巣にされると思われる。
彼らに本を持ち去らせてもよい。その場合、後のイベントで回収の機会が用意される。
なお、ローブの男たちは10億円を持ってそそくさと逃げてゆく。取引前にこのイベントが発生した場合、その後は無事に取引を完了できる。
受け取ったスーツケースの中には、イオドの書の原本(KC8P)が入っている。これは、長い年月を経たであろう羊皮紙が、黒い2枚の金属に挟まれた本である。
解読不能な古代語で記されているため、どのような内容であるかは不明である。
この本を目にした探索者は、周りの生物の姿すべてが、動物や鉱物、そして植物の奇妙な集合体のように見える幻覚を見る。
幻覚を見てSANチェック
1/1D4
また、1時間かけて〈図書館〉に成功することで魔法陣の書かれたページを発見する。
魔法陣は五芒星形が複雑に絡み合った文様で、中央には輝く水晶のようなものが記されている。
加えて、魔法陣の外側に書かれたいくつかの五芒星形の中には人間が一人ずつ立っている。
後に倉庫で発見する魔法陣は、この魔法陣の真ん中が欠けたものである。
組に戻ると、明らかに普段と様子が違うことが分かる。建物の窓が割れ、中からは一切の音がしない。
中はひどく散らかっており、組長と探索者を除く組員10人全員が倒れ伏している。彼らのうち、息があるのは7人。
組員達は鈍器や体に靴の跡が残るほどの強烈な蹴りによって死亡あるいは重症を負っている。
意識のある組員から以下の情報を得ることができる。
・探索者たちが取引へ向かってしばらくした後、組長が儀式の準備をすると言って地下の倉庫兼ガレージへと向かった
・そのあとすぐ、10人ほどの人間が組に襲撃をかけてきた
・抵抗したものの、組員は全員倒されてしまい、奴らは組長の所へ向かっていった
地下にある倉庫兼ガレージには、組で使用する車などが置かれている。ただし、中は血の匂いが充満している。
壁沿いには組長の硫黄龍三が倒れている。彼は腹からおびただしい量の血を流しており、もはや長くないことが分かる。
龍三は探索者たちを見ると、話しかけてくる。
「おお……よく来てくれた。取引は無事に終わったか?こんな姿で出迎えてしまってすまないな……。
俺はもう長くない……。頼む。俺の野望を継いで、世界を征服してくれ……。魔法陣の上で呪文を唱えれば儀式は完成する。
そうすれば、世界はお前たちのものだ……。これが呪文のメモだ……。魔法陣に必要な水晶は奴らに奪われた。
何としても取り返し、世界征服を頼む……」
なお、龍三は探索者たちが世界征服をするというまで死亡しない。はいと言うまでひたすら頼み続けてくる。
頼みを受けた場合、龍三は最後の言葉を残し死亡する。
「流石俺が見込んだ奴らだ……!俺が用意した道具を使ってくれ……。後は任せたぞ……。
ああ、そうだ……豆太郎の世話を頼む。あいつはいいやつだ……」
龍三は死ぬ間際に自分の背中に隠れていた壁のスイッチを押す。スイッチを押すと、ガレージの壁が開き巨大な倉庫が現れる。
倉庫の中央には水晶をはめるらしき台座と、中心が空いた血の魔法陣がある。中には様々なものが置かれている。
RPG-7、ダンプカー、ダイナマイト、ヘリコプター、戦車、75mm野戦砲、クレイモア地雷、火炎放射器、C-4、パラシュート、セスナ、劇薬などである。
その他にも、様々な銃器や武器、拷問器具などが置かれている。探索者の望むものはたいてい用意されていてよい。
データはルールブックやクトゥルフ2010、2015などを参照すること。
また、倉庫の隅には巨大な犬小屋が置かれており、豆太郎と書かれた表札がついている。中には豆しばがいる。
豆太郎はとても人懐こく、かわいらしい。
倉庫を一通り見たところで、意識を取り戻した組員が集まってくる。
組員達は口をそろえて、やりましょう!世界征服!と息を荒げている。
※探索者達に技能が足りない場合、その技能を持つ組員を用意してもよい
次に探索へ向かう場所について、組員がいくつか情報を持っている。
組長の死亡後、倉庫で侵入者についての話を組員が伝えてくる。
・1人は近くに住む有名な金持ちだった
・1人はこの町で探偵業を営む探偵だった
・1人に酷いけがを負わせてやったが、先ほど病院に搬送されたという情報が入った
・金持ちは儀式に必要な水晶を奪った
・探偵は顔が利く存在で、仲間集めを行っているに違いない
・病院に搬送された男がグループに指示を出していた。奴が握っている情報を聞き出す必要がある
・全員消しましょう!
探索者たちはこの情報をもとに、3か所の探索を行うことになる。
1か所を探索した時点で、4.色仕掛けのイベントが起こる。
1.金持ちの男
名前は白鳥翔。彼はディレッタントの探索者風NPCである。
白鳥は町1番の豪邸に住んでいる。豪邸は高い塀で囲まれており、鉄製の門が取り付けられている。
庭には多数のライオンが放し飼いにされていて辺りを警戒している。
屋敷の寝室には金庫が設置されており、中には儀式に必要な水晶と、奪われていた場合は本が入っている。
その他、聞き込みなどによって以下の情報が判明する。
・白鳥は変わり者で、一人で暮らしている
・最近、金庫を購入した
白鳥は、昼間は書斎、夜は寝室にいる。彼は襲撃を受けると驚いた様子を見せつつも抵抗する。
水晶は金庫に厳重に保管されているので、家をどのようにしても破壊されない。
金庫は組に持ち帰りさえすれば組員が開けてくれる他、白鳥から番号を聞き出すこともできる。
※探索の例
・ダンプカーで門から突っ込む
・砲を打ち込みまくる
2.探偵の男
名前は丹波貞義。彼は探偵の探索者風NPCである。
丹波は町の探偵で、100階建てオフィスビル最上階の一室に住んでいる。ビルの警備は非常に厳重で、常に警備員が見回っている。
身の危険を感じている丹波は、このビルから出ようとしない。ただし、彼は有名な探偵なのでオフィスの場所はすぐに判明する。
その他、聞き込みなどによって以下の情報が判明する。
・丹波は近頃常に電話を掛けていて、何やら仲間を集めている様子である
・「今度こそ奴らを壊滅させてやる」などと頻繁に話している
※探索の例
・ヘリコプターからRPG-7を打ち込む
・パラシュートで屋上から侵入する
3.病院の男
名前は安井玲人。彼は学者の探索者風NPCである。
安井は町の大学に勤める大学教授である。彼が入院している病院は町で1番大きく立派な病院。
彼は個室に入院している。面会時間の間は大学生がひっきりなしに見舞いに訪れている。
大学生達からは、教授はいい人であることと、犬を怖がることを教えてもらえる。
探索者たちがその中に紛れることも可能だろう。彼と話ができた場合、以下のことを聞ける。
・この怪我はとある悪の組織とトラブルがあったときのもの
・悪の組織の企みは挫いた
・生き残りが何かをしようとしているらしいが、知り合いの探偵が仲間を集めてくれている
・万が一儀式が行われても、海外に隠れている仲間に対抗方法……信じるかはわからないが呪文を教えてある
彼はただ始末するのではなく、彼の知る儀式の対抗方法を聞き出す必要がある。
聞き出すための難易度はPLの良心に合わせてKPが決定する。基本的には、犬(豆しばの豆太郎など)を見せれば酷く怯えて何でも話す。
彼の知る情報は以下の通り。
・硫黄党が行おうとしている儀式は、とある神を呼び出して支配し、世界を壊滅させる儀式
・儀式が行われれば、儀式に使われた五芒星の魔法陣の外にいる者は呼び出された神に殺されてしまう
・《円を反転する》呪文を使えば、魔法陣が地面に彫り込まれでもしていない限りは魔法陣の効果を逆転させられる
・儀式を行っていたものは逆転した魔法陣の中で神に殺され、神は帰ってゆく
※実際に行われた探索の例
・病院の窓から安井を投げ捨ててトラックに乗せる
・尋問の後、儀式前にNPC達への見せしめとしてファラリスの雄牛で焼く
4.色仕掛け
上記1~3の人物のうち1人を始末した後、街で話しかけてきたり、事務所にやってきたりして天音瑠偉が接触してくる。
見た目は導入で聞いた探索者の好みの見た目そのままとする。
彼女は探索者のうち1人をホテルに誘い殺害しようとする。
探索者がすきを見せた場合、手に持ったナイフ(1D4+2+DB)で襲い掛かってくる。
彼女を捕らえるなどして情報を聞き出した場合、組に突入した者たちの仲間であることと、両親を硫黄党に消された恨みからの行いだということ、1~3のNPCについて聞き込みで得られる情報を話す。
儀式は組の倉庫で行う必要がある。理由は地理的要因などで、探索者がほかの場所で行おうとしている場合は組員の口から伝える。
まず、本に記された図の通り、五芒星形の中に儀式に参加する人間が入る必要がある。
その後、五芒星形の中にいる者全員が10正気度ポイントを払い、代表者が呪文を唱え始める。
呪文の成功率は、儀式に参加したものが捧げたMPによる。このことは探索者に伝えてよい。本シナリオでは成功率100%で儀式が行われることを想定している。
万が一儀式が失敗した場合は、日を置いてやり直すほかないだろう。
組員7人のMP合計は86で、彼らはすべてのMPを儀式に使用する。
支払われたマジックポイント1につき1分、代表者が呪文を詠唱し続ける必要がある。
呪文も終盤に差し掛かったあたりで、3人の見覚えのある人間が儀式場へと現れる。
内訳は男2人女1人とする。シナリオ上で生き残っており、印象深いNPCがいればそのNPCを登場させる。
そのようなNPCがいない場合、彼らの兄弟や友人という設定で似たようなNPCを登場させる。
彼らは儀式場に現れると、《円を反転する》の呪文を唱える。魔法陣を掘るなどして対策を行っていなかった場合、儀式を完成させると探索者たちは全滅する。
以下は、呪文への対策を行っていたと想定した場合のセリフの例である。
「硫黄党!貴様らの企みはもう終わりだ!まさか失踪した友人を探すことが世界を救うきっかけになるとはな……!
いくぞ!○○!○○!くらえ……俺は《円を反転する》!」
「やったか!?」
「そんな……なぜ効かないんだ……だが、あきらめるわけにはいかない!みんな!世界を救うために手を貸してくれ!」
呪文が効かないことが分かった時点で戦闘開始。代表者以外は戦闘に参加してよい。呪文が効いた場合彼らは何もせず帰ってゆく。
他にも、仲間が死ぬごとにセリフを言わせると面白いかもしれない。
・これが終わったらお花屋さんをやるって言ってたじゃないか!
・世界を救ったら彼女にプロポーズするって言ってたじゃないか!
・死ぬな!妹を一人にする気か!
など。
《円を反転する》に対処し呪文を完成させた場合、イオドが招来される。
《円を反転する》に対処できなかった場合、同じくイオドが招来されるが探索者たちが殺害される。
「辺りが目も眩むような光に包まれる。そして、徐々に光の輝きの中から古代の支配者の姿が現れた。
奇妙な鉱物と水晶の構成はうろこで覆われた半透明の肉体を通して輝きを放ち、全身が粘着性の物質で覆われ、周囲には奇怪に脈打つ光が纏わりついている。
膜質状の肉体から粘着性の物質が細く滴り、浮き上がる。それは植物のような付属肢となって宙をのたうった。
あなたの目の前にいるその偉大なる生物は、小さく空腹そうな吸引音を出して、大きな複眼であなたを見つめている」
イオドを見てSANチェック
1D6/3D10
探索者たちは(発狂している探索者も含めて)、自らが呼び出した生物がこの世を破壊することを実感し、天にも昇るような幸福感を味わう。
イオドを呼び出した時点でシナリオエンド。
シナリオクリアで1D20の正気度回復。10正気度を払い儀式に参加した探索者は追加で1D20の正気度回復。
儀式に参加した探索者はクトゥルフ神話技能に+8%。〈古典ギリシャ語〉と〈コプト語〉の経験ロールを行う。