今は亡き彼に捧ぐ - Cthulhu Scenario Storage|クトゥルフシナリオストレージ

今は亡き彼に捧ぐ

【このシナリオについて】


シナリオ傾向:シティ、現代
推奨人数:3人~
戦闘:有り
推定プレイ時間:3~4時間
難易度:ふつう
システム:クトゥルフ神話TRPG

【あらすじ、舞台設定】


探偵である探索者は猟奇的な殺人事件の調査を依頼される。
第二、第三の事件が起きる中、容疑者として浮上するのは、調査の依頼者、失踪したはずの男、2名の警察官など。
犯人に狙われた探索者達は無事に生き残ることができるのだろうか?
※このシナリオは鮫島恭介さんとの合作シナリオです
※失踪したお気に入りの探索者を追悼するためのシナリオだそうです
※可能な限り身内ネタは排除していますが、登場する朝井亜門(アモン)と高野春香を馴染みのあるキャラクターに変更するとより楽しめるかもしれません

舞台は東京。本シナリオ上の東京にはクトゥルフ神話に対抗する組織である「セント・ジェロームの剣修道団」の支部がある。
彼らは長年悪魔であるアモンを追い続けている。(角を持つ男(アモン)はニャルラトテップの化身の1つで、悪魔などとして知られています)
シナリオ開始の僅か前、偶然にも異界に足を踏み入れた暴力団員、朝井亜門はアモンと対峙することになる。
朝井亜門は為す術もなく死亡するが、奇跡的にアモンに傷をつけることに成功する。
自らを脅かす存在が東京にいると判断したアモンは、殺害した朝井亜門の姿を借り、東京へと姿を現す。
そして、朝井亜門とは関係ないものの、悪魔に対抗する組織である「セント・ジェロームの剣修道団」を発見する。
アモンは修道団を壊滅させることを決意し、『アザトースの書』に名前を記させることにより≪荒野の狩猟≫を行いメンバーを殺害する。
これを受け、修道団の長谷ヨセフは非神話的な事件であった場合のため探偵である探索者に調査を依頼する。
また、事件を調査する警察官として、朝井亜門の身内である高野春香と、修道団の一員である中村苫が送られる。
高野春香は調査を放り出し朝井亜門の捜索を行い、中村苫は修道団の証拠隠滅に駆られ事件の調査が進むことは無い。
証拠隠滅と探偵への調査依頼は矛盾する行為だが、これは修道団の方針として、仲間との繋がりを希薄にするというものがあるためである。
これにより、仲間同士の連絡が行われず、矛盾した結果が生まれている。(これは日本支部独自の傾向とする)
アモンを止めることができなかった場合、セント・ジェロームの剣修道団は壊滅し、世界は神話生物への対抗手段を一つ失うだろう。
探索者達は事件の真相に気づき、アモンによるセント・ジェロームの剣修道団壊滅を止める必要がある。
※本シナリオではアモンは常に朝井亜門の姿を取っているものとします

【資料】


角を持つ男
MM214P
ニャルラトテップの化身の一つ。
パン、ケルヌンノス、猟師ハーン、荒野の狩人、サタンなどは全てニャルラトテップの相の一つ。
本シナリオでは悪魔であるアモンとして扱う。
角を持つ男は全ての野生の獣への完全な支配力を有している。
また、近隣地域の天候をも支配している。
※本シナリオでは、悪魔(角を持つ男)は嘘をつけないものとする。
※また、アモンが≪支配≫の呪文を使う場合、相手の目を見る必要があることとする。
STR29 CON48 SIZ20 INT86 POW50 DEX20 HP34 DB+2D6 SANチェック1/1D6
武器
こぶし 90% 1D6+DB
角で突く 75% 2D6+DB
呪文
動物と天候の操作。その他KPの望む呪文全て。≪支配≫(基本259P)
※マジックポイント1を消費することで1D10ポイント耐久力を回復する
荒野の狩猟
幽鬼じみた馬に乗った亡霊あるいはアンデッドの猟師達と、飛び掛かる亡霊の猟犬の群れを率いる。
この群れは一晩中、へんぴな田園地帯を獲物を探して駆け回る。
荒野の狩猟を見た場合、1/1D8のSANチェック。
本シナリオでは荒野の狩猟を改変して用いる。
1.荒野の狩猟のターゲットにできるのは『アザトースの書』に名前を記した者であるとする。
2.荒野の狩猟を使用した場合、群れが招集されるとともに、辺りの光景が荒野に変わる。
3.『アザトースの書』に名前を記さなかった者が近くにいた場合、荒野に移動するものの群れに狙われることは無い。
4.現れるのはアンデッドの猟犬のみとする
アンデッドの猟犬(基本234p、犬)
STR7 CON11 SIZ5 POW7 DEX13 HP8
武器
噛みつき 30% 1D6

炎の精
基本191P
炎の塊。本シナリオで登場するものは、セント・ジェロームの剣修道団によって召喚されたものである。
DEX17 HP4
※物質的な武器ではダメージを受けない。
※水をかければ、水2リットルにつき耐久力1ポイント。消火器なら1D6、バケツ1杯の砂で1D3ダメージ。
※上記の方法で攻撃する場合、DEXの5倍を成功率とする。
攻撃
タッチ 85% 2D6
※炎の精は犠牲者にタッチすることで攻撃を行う。(炎の精に攻撃できる距離=炎の精がタッチできる距離とする)
※2D6のダメージロールの結果と、犠牲者のCONを対抗させる。
※成功でダメージの半分。失敗すればそのままのダメージを受ける。
※MP吸収はしないものとする。

セント・ジェロームの剣修道団
CN151P
世界中の悪魔を探し出し、滅ぼすことに専念している組織。
アルプス地方の人里離れた修道院が本部になっている。
メンバーの多くは托鉢修道士で、キリスト教の聖者。
人々の施しにより生活し、悪魔の兆候を見つけると本部に報告する。
同時にそれを滅ぼすために必要なことも行い、自分の命を捧げる覚悟もできている。

NPC
朝井 亜門
東京で活動するヤクザ。男らしく筋の通った性格。
高野春香の育て親であり彼女から強い信頼を受けている。
一週間前に角を持つ男に殺害され、その姿を奪われた。


高野 春香 警察官 女 158cm 45kg
STR13 CON14 POW8 DEX13 APP9 SIZ12 INT16 EDU18 HP13 MP8 SAN40 アイデア80 幸運40 知識90
技能
戦闘
回避50 拳銃50 サブマシンガン50 ショットガン50 マシンガン50 ライフル50 日本刀70 居合70
探索
応急手当62 聞き耳60 追跡60 図書館60 目星60
交渉
言いくるめ50 説得60
知識
心理学55 法律50

武器
S&W M37 エアーウェイト 20% 1D10 15m 2回攻撃 5発 故障00
日本刀 15% 1D10+DB 耐久20

不真面目な警察官。
尊敬していた朝井亜門という男が失踪したため、命じられた事件の調査をせず朝井亜門の捜索を行っている。
朝井亜門の言うことはすべて信じてしまう。
特徴(クトゥルフ2015):銃火器の達人


中村 苫 警察官 男 175cm 66kg
STR11 CON12 POW10 DEX10 APP12 SIZ14 INT11 EDU15 HP13 MP10 SAN50 アイデア55 幸運50 知識75
技能
戦闘
組みつき45 拳銃60
探索
応急手当60 聞き耳60 追跡50 目星55
行動
運転(自動車)60 変装21
交渉
言いくるめ55 説得50
知識
クトゥルフ神話15 心理学50 法律30

武器
S&W M37 エアーウェイト 20% 1D10 15m 2回攻撃 5発 故障00

セント・ジェロームの剣修道団の一員かつ警察官の男。
修道団員が逮捕されないよう警察の立場から補助している。
名前の苫は聖人の名に由来する。


※剣修道団員のステータスは高野春香か中山苫の物を流用してください。
※剣修道団員の名前については、よく調べれば洗礼名であることが分かる。
長谷ヨセフ
探偵である探索者に調査の依頼をしてくる。
セント・ジェロームの剣修道団の一員で、口は堅い。
眼がぎょろぎょろとしており、どことなく怪しげな男。
嘘をつくことが苦手。

カミロ・ロマーノ
セント・ジェロームの剣修道団の一員。
彼は修道団によく見られる托鉢修道士で、世界を旅していた。
しかし、アモンに目をつけられてしまい、シナリオ開始時には死亡している。

西野隆行(西野トマス)
セント・ジェロームの剣修道団の一員。
探索者達の住む町には、大学への進学に伴い6年前に引っ越してきた。
大学在学中にセント・ジェロームの剣修道団に出会い、以後は悪魔を探す日々を送っている。
しかし、アモンに目をつけられたことにより死亡する。

小野田 智弘
セント・ジェロームの剣修道団の一員。
探索者の探偵事務所近くに住む、小野田一家の主。
セント・ジェロームの剣修道団に所属していることは巧妙に隠しており、誰もその事実を知らない。
家族は妻の小野田 弘子と、息子の小野田 俊樹。

飯島マルコ
セント・ジェロームの剣修道団の院長。
修道院の情報をすべて管理している。


ユダの悲哀の詩編
MM257P
本シナリオで登場するものは日本語に訳され改変されたものと、加筆されたものとする。
聖書から失われた本の1つであり、悪魔について多く論じられている。
正気度喪失1/1D6、〈クトゥルフ神話〉に+3%、研究理解に13週間、ななめ読みに3時間。
改変された物には訳者からの補足として、不確かな悪魔の特徴が書き足されている。
加筆された物には≪刀身への祝福≫が含まれている。

ネスター書簡
7巻の巻物からなり、ネスターの啓示と金言がまとめられている。
本シナリオでは英語に翻訳されたものが1巻のみ登場する。
1巻のみのため、<聖なる炎を送る>(炎の精の召喚/従属)(基本283P、191P)以外を読み取ることはできない。
1巻を解読した場合。
1/1D3の正気度喪失。3%のクトゥルフ神話技能。
平均13週間の解読期間/斜め読みに8時間。


MAP
セント・ジェロームの剣修道団
KP用

PL用

第3の事件、現場


【導入】


導入のため、探索者達のうち1人は探偵で、その他の者は探偵探索者と協力関係にある必要がある。
また、探索のモチベーション維持のため好奇心旺盛な探索者であることが必要。
※本シナリオは一応ですが犯人が誰かを推理する楽しみを用意しています
※しかし、朝井亜門があまりにも怪しいので、その他のNPCを怪しくすることでバランスを取っています
※KPは可能であればそれぞれのNPCを怪しく演出してみてください

9月、探偵である探索者の事務所に、1人の男が依頼にやってくる。
男は特に特徴のない顔立ち・体格だが、唯一ぎょろぎょろとした眼が印象的である。
彼は長谷ヨセフと名乗り、次のように話す。
※彼は剣修道団の一員ですが、そのことは隠しています。しかし、彼は嘘をつくことが苦手です
※ですが、あまりにも怪しすぎると依頼を受ける理由がなくなってしまうので、そこそこの怪しさにとどめましょう
・先日、友人が何者か襲われ死亡した
・警察は何らかの獣に襲われたのだと決めつけている
・女性の警察官が1人来たが調査を行ってくれない
・友人の死因を突き止めて欲しい
この時点で、〈アイデア〉に成功すれば、昨日報道されていたニュースに似たような事件があったことに気づける。
ニュースの内容は、身元不明の外国人男性が獣のような物に襲われ死亡したというもの。
長谷ヨセフから話を聞くことでさらに詳しい内容を知ることができる。
・被害者はカミロ・ロマーノという34歳の男性
・日本には旅行に来ていて、その日は鶴安館という旅館に泊まっていた
・鶴安館に泊まった次の朝には死体として発見された
長谷ヨセフは、一般的な額であれば調査料を支払うことができると話す。
彼に質問する場合、以下のように答える。

カミロ・ロマーノについて
SNSで偶然知り合った。日本に来ると聞き、会うのを楽しみにしていた。
彼と会ったことは無いので、これ以上のことは分からない。
※この話は嘘です。SNSで長谷ヨセフやカミロ・ロマーノについて調べても何も見つかりません

長谷ヨセフという名前について
ヨセフというのはカトリックの洗礼名。本名は長谷円。

死因や犯人の心当たりについて
何もない。獣に襲われたのか、何らかの理由で誰かに襲われたのか見当もつかない。
警察は大型の獣による噛み傷があると話していた。
死因を突き止めることで、少しでも友人の無念を晴らしてやりたい。

女性の警察官について
高野春香という名の警察官だったが、現場を少し見た後はどこかに消えていった。
朝井亜門という男を探していると言っていたが、カミロの事件について調査してほしい。

なお、彼は毎日、調査の進展について連絡してくる。
※探索者達に彼の存在を忘れさせないためです
ただし、セント・ジェロームの剣修道団につながるような情報を話すことは無い。
(カミロ・ロマーノやその他の被害者との繋がりなど)

【調査】


現段階で探索者が調査として行えるのは、鶴安館やその周辺に対しての調査のみだろう。
もし、長谷ヨセフについて調べる場合は、後述の「長谷ヨセフの調査」を参照。
鶴安館は探索者の探偵事務所から車で1時間ほどのところにある旅館。
評判をインターネットなどで調べれば、質は低いものの非常に安く、金のない旅行者が良く泊まっているということが分かる。
〈図書館〉や〈コンピュータ〉に成功した場合、事件についての口コミを発見できてもよい。
その内容は、同じ日に旅館に泊まっていたが、大きな物音などは全くなかったというもの。
加えて、被害者の男性は何者かを探しているようだったという口コミも見つかる。

【鶴安館】


鶴安館は古びた木造の民宿で、入口の上には鶴安館と書かれた木製の看板がついている。
敷地内には小さな駐車場があるが、停まっている車は無い。
事件の依頼を受けてすぐに向かった場合、夕方あたりに到着する。
入り口付近で〈アイデア〉に成功した場合、何者かの視線があることに気づく。しかし、視線の主を探しても見つからない。
探索者が熱心にその視線の主を探している場合、「ここまで痕跡が見つからないのはありえない」などと伝えて、神話的な要因を匂わせてもよい。
※カミロ・ロマーノを殺害した後、おびき寄せられた関係者を探すアモンの視線です
中に入ると、受付に暇そうな老人がいることが分かる。
60歳程に見えるその男性は、探索者達を見ると「お客さんですか?」と話しかけてくる。
この宿の従業員は彼しかおらず、事件のあった部屋に向かうことは容易だろう。
話を聞く場合、彼は以下のことを知っている。宿に泊まる場合は空き部屋を教えられる。

事件について
・事件があったのは昨日の朝(依頼があった日に向かった場合)で、被害者のカミロ・ロマーノは1週間ほど宿泊していた
・他の宿泊客が異臭がするというので部屋に入ったところ、布団の上で血まみれで死んでいるカミロがいた
・事件の晩、大きな物音などはしなかった

カミロについて
・いつも聖書を持ち歩いていた
・カミロはここの近辺を何やら調べまわっているようだった
・カミロは悪魔を探していると話していた

遺体について
・余りに悲惨だったので詳しく見ていないが、確かに獣か何かに噛み千切られたようだった
・遺体からは、僅かに腐臭が漂っていた

他の宿泊客について
・怪しい者はおらず、全員が事件に動揺していたようで、その日に去って行った
・名簿にあるのは簡単な名前のみで、連絡を取ることは難しい
・今は、宿泊客はいない

警察について
・事件があった日に高野春香という刑事と何人かの人間が来た
・少し現場を調べた後、恐らくは獣に襲われたのだろうと話しどこかに行った
・担当は彼女らしいが、調査をしてくれる気配はない
・今日は中村苫という刑事がきており、現場を調べている

【中村苫との接触】


事件現場にはボストンバッグを持った男の刑事がいる。彼は探索者に気づくと、事件現場なので立ち入り禁止だと話す。
ボストンバッグの中には、彼が証拠隠滅のため回収した品々が入っている。中身は十字架などキリスト教を連想させるもの。
彼に質問した場合、以下のように答える。

あなたは誰?
刑事ですと話し、警察手帳を見せる。
警察手帳には中村苫と書かれており、顔写真も一致する。

中村苫という名前について
珍しい名前でしょう?
両親が聖人の名前にちなんでつけたそうなんです。

事件について
報道されている内容が全てで、今のところ詳しく分かっていません。

事件を調査しているのは高野春香のみのはずでは?
先ほど人員が追加されました。
※嘘です

鞄の中身は?
証拠品です。見せられません。

高野春香について
同僚です。失踪した友人だか親戚だかを探しているみたいで、彼女はほとんど仕事をしなくなりました。

しばらく会話するなどして時間が経過すると、朝井亜門を探しに出かけていた高野春香が現場に帰ってくる。
その際、窓を見ることができる位置に探索者がいる場合、〈目星〉に成功すれば窓越しにそのことに気づく。
同じく高野春香が帰ってきたことに気づいた中村は、証拠品を持ちかえらなければならないと言いその場を立ち去ろうとする。
彼を言葉によって止めることは難しい。
もし、中村と高野が対面した場合でも、高野は中村がここにいる理由を疑問に思いつつも深く追求しないだろう。

【高野春香との接触】


高野春香は現場付近にいる探索者を見つけると、立ち入り禁止だぞと話しかけてくる。
その後、現場を一瞥するとすぐに帰ろうとするが、思い出したかのように再び探索者に話しかけてくる。
その内容は、朝井亜門という白いスーツを着た顔に傷のある男を見なかったか?というもの。
探索者達はその男に見覚えはないが、警察官や暴力団関係者の探索者がいる場合、〈知識〉に成功すれば近隣の暴力団にそのような男がいたことが分かる。
探索者がその男を知っているようなそぶりを見せた場合、教えてくれと必死に頼み込んでくる。
探索者が知らないと答えた場合、一週間前から失踪していることと、少しでも何かわかったら教えてほしいと頼み込んでくる。
その様子は必死なもので、〈心理学〉に成功すれば彼女がその朝井亜門という男をとても大切に思っていることが分かる。
高野春香に質問した場合、以下のように答える。

事件について
よく見ていないがたぶん獣に襲われたんだろう。
私一人で調査しているので、朝井亜門を探す時間ができてちょうどよかった。

中村苫について
同じ署にいる同僚。詳しくは知らないが、熱心なキリスト教徒だったと思う。

現場の様子に変わりは無いか?
何か物が減っている気がするが、分からない。

朝井亜門について
親代わりの大切な人。必ず見つけたい。彼がいないと生きていけない。

会話が終われば、探索者達に連絡先を伝えて高野春香は帰ってゆく。
彼女は去り際に、思い出したんだが、被害者はペンを握りしめて死んでいたらしいと話す。

【第1の事件現場】


事件現場では布団があったであろう位置にのみ血痕がついている。部屋に血が飛び散っているということはなく、身動きできないまま死亡したかのようである。
また、〈医学〉に成功した場合、報道されている事件の状態などから考えて、何故か出血量が少ないと感じる。
部屋にあるものは証拠として持ち出された者が多いのか、ほとんど何も残っていない。
部屋にある押し入れを調べるか、〈目星〉に成功した場合、しおりが落ちていることが分かる。
しおりには、「In the beginning the Word already existed. The Word was with God, and the Word was God.」と書かれている。
〈英語〉に成功すると、「初めに、ことばがあった。ことばは神とともにあった。ことばは神であった」という意味であると分かる。
英語に成功した場合、〈知識〉2分の1、〈オカルト〉、〈人類学〉に成功した場合、
英語に成功しなかった場合、〈知識〉の3分の1、〈オカルト〉と〈人類学〉の2分の1に成功した場合、聖書の一節であることが分かる。
インターネットなどで検索した場合も聖書の一節であることが分かる。

【第2の事件】


事件の依頼があった翌日、探索者は朝のニュースなどで次の情報を得る。
・今朝、何者かに襲われ死亡したと思われる死体が新たに発見された
・先日のカミロ・ロマーノと同様の傷跡で、事件には関連性があると思われる
・事件があったのは探索者の事務所から15分ほど行ったところにある住宅街
〈アイデア〉か〈ナビゲート〉に成功すれば、ニュースなどの映像からその場所がすぐにわかる。
失敗した場合でも、おおよその場所が分かるため現地に向かい聞き込みなどをすれば現場に辿りつけるだろう。

【第2の事件現場】


事件があったのはとあるアパートの一室。
事件現場にはボストンバッグを持った中村苫がおり、探索者達を見ると立ち入り禁止ですよと話しかけてくる。
中村苫に質問する場合、以下のように答える。事件の被害者については、近隣での聞き込みでも同様、又はさらに詳しい情報が得られる。
中村苫のボストンバッグを見ることができた場合、中にはキリスト教に関連する品々とペンが入っている。

被害者について(近隣の住人に聞いた場合)
西野トマスと名乗っていた。
何年か前は大学に通っていたようだが、宗教に入れ込んで通わなくなった。
隣町の教会に通っているようだった。
よく分からないが、何者かを探しているようだった。
※隣町の教会については「セント・ジェロームの剣修道団支部」を参照

事件について
被害者はこのアパートで一人暮らしをしていた西野隆行。
詳しいことは捜査中だが、前の被害者との関連性は無いだろう。

何をしているのか?
証拠品の回収を行っていた。

高野春香が「一人で調査している」などと言っていた
連絡の行き違いがあったのでは?

証拠品とは?
教えられない。
※中村苫は証拠品を見せる気は全くありません。捜査の協力などを理由に交渉することは不可能です
※その他の理由の、半ば脅迫めいたような言いくるめであれば見ることができるかもしれません

しばらく会話すると、高野春香が現場へと戻ってくる。それに合わせて、中村は「高野さんが戻ってきたようなので証拠品を署に持っていきます」などと話して帰る。
高野春香は中村苫を見送った後、現場を一瞥すると探索者達に朝井亜門について尋ね、その後すぐに帰ってゆく。
彼女が亜門を探す様子は、相変わらず真剣である。中村苫について尋ねた場合、今日から配属されたと答える。
探索者達は中村苫が戻るまで、無人となった現場を調査することができるだろう。
部屋はワンルームで、ベッドや机、パソコン、本棚などがあり、僅かだが腐臭が漂っている。
〈目星〉に成功するか、それぞれを詳しく調べてみた場合、机の上に置かれていたものや、一部の本が持ち出されていることが分かる。(中村苫によるもの)
残っている本は大学で教科書として使用していたであろうものや、数年前の漫画など。
パソコンを調べた場合、インターネットの閲覧履歴を確認するか、〈コンピュータ〉に成功すると、持ち主は悪魔や都市伝説、オカルト的な存在の目撃情報などを調べていたことが分かる。

【アモンとの接触】


探索者達が現場の調査を終え、その場を立ち去ろうとした時、白いスーツを着た顔に傷のある男が話しかけてくる。
彼はアモンと名乗り、今起きている連続殺人事件について調べているのか?と聞いてくる。
※本シナリオでは悪魔(アモン)は嘘をつけないこととしているため、アモンと探索者の会話の難易度は高いです
※答えたくない質問が来た場合、アモンは黙ったり、「何を言っているんだ、わかるだろう」や「本当にそう思っているのか?」などと言ったりして適当にごまかします
※正直、嘘をつかないという設定にどこまで意味があるのか分からなくなってきたので、普通に嘘をつかせてもいいかもしれません
探索者が調査していると答えた場合、アモンは手伝おうと話す。調査していないと答えた場合、嘘をつくな、手伝おうと話す。
アモンは、「俺はこの事件について知っていることがある」と言い、次の情報を話す。
アモンはこの都市の地下にいる食屍鬼とこの事件が繋がっていると探索者達に思い込ませるため、次のことを話す。
ただし、この事件と繋がっているとは言わない。
・この都市の地下には、食屍鬼という人を食う化け物が巣食っている
・そいつらは獣のような牙をもっており、腐臭を放つ
・この事件の犠牲者は、皆何らかの存在を追っていたようだ
・もしかすると、彼らは返り討ちにあったのかもしれない
・俺も同じように追っている存在がいる。お前たちもそうなら協力しよう

彼はここまで話すと、探索者達に連絡先を交換しようと持ちかける。
また、「何かわかっているか?」と探索者に尋ねてくる。
彼に質問する場合、以下のように答える。

朝井亜門か?、あなたは誰?
アモンだ。

行方不明では?
確かに、しばらく姿を消していた。
俺は1度死んだようなものだ。今はただ自分の目的を達成したい。

高野春香が探していた
今は俺を知る人間に会いたくない。自分の目的が最優先だ。

少し会話すると、アモンは「何かわかったら連絡する。そちらも頼む」などといいその場を去る。
アモンを見たことを高野春香に連絡した場合、急いでこちらに向かってくる。
しかし、高野春香が到着するまでアモンを引き留めることは難しいだろう。
春香は興奮した様子で探索者達からアモンの特徴を確認すると、どこで会ったのか、何を言っていたのか詳しく聞いてくる。
〈心理学〉に成功すれば、彼女が朝井亜門をとても大切な存在だと考えていることが分かる。
前回の〈心理学〉に成功していた場合、それは盲信の域に達していると感じる。
彼女はお礼として、探索者達が聞けば捜査の情報を教えてくれるだろう。
彼女は、これまでの探索で探索者が取得できなかった情報や、中村が持ち帰ったという証拠品がペン以外ほとんど無いことを話す。

【以降の展開】


探索者達が「アモンとの接触」を終えた頃には、時刻は夕方になっている。
もし、そのまま帰るのであれば、帰宅後、その日の晩に「第3の事件」が起こる。
西野が通っていた隣町の教会に向かうのであれば「中村苫の襲撃」の「1.探索者達が隣町の教会へと向かった場合」が起こる。
また、長谷ヨセフを調べる場合は、「長谷ヨセフの調査」を参照すること。

【長谷ヨセフの調査】


探索者達が、長谷ヨセフが怪しいと考え、調査しようとした場合、電話などで彼から話を聞くか、直接会おうとする可能性が考えられる。
彼は、自分から「セント・ジェロームの剣修道団」の話を漏らすことは無い。
ただし、呼出には簡単に応じるため、彼と直接会い、その後〈追跡〉や〈隠れる〉〈忍び歩き〉などで尾行すると、彼はセント・ジェロームの剣修道団の教会に向かう。
〈隠れる〉、〈忍び歩き〉に失敗した場合、彼は尾行に気づき、教会には向かわない。
教会にいるところを目撃し問い詰めた場合、彼は隠すことを諦め、全てを話した後に探索者達の能力を認めて協力を願い出る。

【中村苫の襲撃】


1.探索者達が隣町の教会へと向かった場合
探索者達が隣町の教会に向かう場合、中村苫は探索者達が修道団員を狙っている、あるいは修道団員殺害の犯人だと考え、襲撃を考える。
隣町の教会(セント・ジェロームの剣修道団支部)の正確な場所をはインターネットなどには無く、知る人間も少ないため、隣町で少し時間をかけて情報を集める必要があるだろう。
教会は町はずれの林の中を30分ほど進んだところにある。道はけもの道程度のレベルで、車などで入ることは難しいだろう
隣町の教会へと向かう道を進み、林へと近づいたころ、中村苫が襲撃してくる。長谷ヨセフを尾行していた場合は、長谷を見失ってしまう。
長谷ヨセフを説得するなどして、長谷と同行していた場合、長谷が中村を説得し、中村は襲撃をやめる。
ただし、彼は「誰が悪魔にすり替わっているか分からない」と話し、探索者達と協力することは無い。

襲撃を受けた場合、中村苫は「悪魔め!殺してやる!」などと言いながら襲い掛かってくる。その様子はまるで狂信者のようで、説得などに応じる気配はない。
1ターン後、その場にアモンが現れる。以降、アモンはこぶしで中村苫に殴りかかり、中村苫の〈拳銃〉はアモンを狙う。
アモンは探索者達に「大丈夫か?」などと聞いた後、死亡、あるいは気絶した中村苫を「面倒だろう、俺が始末をつけてやる」などと話し、どこかへと持ち去る。
その後、探索者達がそのまま教会に向かうのであれば、「セント・ジェロームの剣修道団支部」を参照。

2.第3の事件後
探索者が第3の事件を調査し、中村苫と会話を終えた後、中村は探索者達が自分たちを嗅ぎまわっていると判断し、消し去ろうとする。
探索者の事務所へ直接襲撃をしたり、夜道を歩いているタイミングを狙ったりさせること。
襲撃を受けた場合、中村苫は「悪魔め!殺してやる!」などと言いながら襲い掛かってくる。その様子はまるで狂信者のようで、説得などに応じる気配はない。
1ターン後、その場にアモンが現れる。以降、アモンはこぶしで中村苫に殴りかかり、中村苫の〈拳銃〉はアモンを狙う。
アモンは探索者達に「大丈夫か?」などと聞いた後、死亡、あるいは気絶した中村苫を「面倒だろう、俺が始末をつけてやる」などと話し、どこかへと持ち去る。

【第3の事件】


探索者達が第2の事件の調査を終え、帰宅した晩(どこかに泊まった場合はその近くで)、第3の事件が起こる。
この事件は探索者の近くで起きるため、真っ先に向かえば、短時間ではあるが警察に邪魔されることなく調査が行える。
このイベントは時間経過によって起こるため、発生まで探索者のすることが無くなるという事態が起きる場合がある。
その場合、イベントの発生を早め、探索者達が遠出していない場合は、その近くで事件を起こす。
遠出している場合は春香が事件を知らせ、共に現場に1番乗りするなど誘導を行えばよいだろう。
もし、探索者が事件の調査を翌日などに回した場合、中村苫が生存していれば「セント・ジェロームの剣修道団」を連想させるものはすべて回収されている。

探索者が事務所やその近くで過ごしている場合、〈アイデア〉と〈聞き耳〉。〈アイデア〉に成功すれば、事件の現場で嗅いだことのあるような腐臭が僅かにすることに気づく。
〈聞き耳〉に成功した場合、ほんの一瞬ではあるが悲鳴のようなものが聞こえる。
腐臭か悲鳴の元をたどることで、第3の事件現場である家に辿りつくことができる。
また、どちらにも成功しなかった場合でも、時間が経過すれば近所がざわめき始めるので、その時点で気づくことができる。
ただし、その場合は現場を調査できる時間は僅かになるだろう。

第3の事件が起きたのは探索者の事務所からほど近いところにある一軒家。
〈幸運〉か〈アイデア〉のうち、KPが適切だと判断したどちらかの技能に成功すれば、家の住人と知り合いか、知っていることとする。
その場合、以下の情報が分かる。この情報は聞き込みなどでも入手できる。
・この家に住んでいるのは3人家族で、サラリーマンの夫と主婦の妻、高校生になる息子がいた
・夫は隣町で働いているようだが、詳しい仕事の内容は不明
・夫は敬虔なキリスト教の信者である
名前は父親から順に小野田 智弘、小野田 弘子、小野田 俊樹。
※小野田 智弘は「セント・ジェロームの剣修道団」に属していることを巧妙に隠しているため、近所の人間はその事実を知りません
※しかし、仲間である西野やカミロの死の調査を行った結果、アモンに発見されてしまいます

家の扉は開け放たれており、腐臭が僅かに漏れ出してきている。玄関の扉を調べた場合、力任せに破壊されていることに気づく。
玄関に入った時点で、〈アイデア〉。成功すると腐臭の元は2階であることに気づく。
1階部分で〈目星〉や〈追跡〉に成功した場合、足跡を発見する。足跡は真っ直ぐと2階へと向かっている。(アモンの物)
1階部分は完全に静まり返っており、足跡以外は手がかりになりそうなものは何もない。
2階に上がると、夫婦の部屋、息子の部屋からそれぞれ腐臭が漏れていることが分かる。
1階から足跡を追跡してきていた場合や、この時点で〈目星〉や〈追跡〉に成功した場合、足跡は息子の部屋、夫婦の寝室、書斎の順で移動していることが分かる。
また、全ての部屋の鍵が乱暴に破壊されていることが分かる。
それぞれの部屋に死体が1体ずつある。
毎回SANチェックを行うのは面倒なので、1つの死体を発見した時点で腐臭などから3人が死亡していることを察し、まとめてSANチェックとする。
3人の無残な死によるSANチェック
1/1D4(先ほどの判定で小野田一家と知り合いだった場合、1/1D6)

息子の部屋
高校生頃の男の部屋らしく、勉強机や、漫画本が入った本棚などがある。部屋は特に荒らされている様子もない。
勉強机の上には教科書やノートが広げられており、直前まで勉強していたことが分かる。
部屋の中央に、体の大部分を何かに噛みちぎられた10代後半に見える死体がある。(小野田 俊樹のもの)
死体からは腐臭が放たれている。〈医学〉に成功した場合、死体が腐っているのではなく、死体や部屋に何らかの理由でこびりついた匂いであることが分かる。
また、大型犬による噛み傷であることが分かる。
〈目星〉に成功するか、勉強机を調べて〈アイデア〉に成功することで、勉強机の上に消しゴムや修正テープなどはあるものの、シャーペンやボールペンがないことに気づく。

夫婦の寝室
部屋にはダブルベッドやクローゼットなどが置かれている。特に荒らされている様子は無い。
ベッドの上には、体の大部分を何かに噛みちぎられた40台頃の女性の死体がある。(小野田 弘子のもの)
死体からは腐臭が放たれている。〈医学〉に成功した場合、死体が腐っているのではなく、死体や部屋に何らかの理由でこびりついた匂いであることが分かる。
また、大型犬による噛み傷であることが分かる。

書斎
扉に近づいた時点で、この部屋の鍵は、他の部屋の鍵に比べて厳重であることが分かる。ただし、鍵は力任せに破壊されている。
部屋の中には本棚と机が置いてある。所々に十字架やマリア像などが置かれており、部屋の主はキリスト教の信者であったことが分かる。
部屋の中央には、右胸と左胸に大きな穴が開き、両目をえぐられた40台頃の男性の死体がある。(小野田 智弘のもの)
死体をよく調べるか、〈目星〉に成功すれば、遺体の両手の人差し指と中指に血がついていることが分かる。
〈医学〉に成功した場合は、それに加えて、彼が自分自身で両目をえぐったのではないかと感じる。
本棚を調べた場合、一部分が持ち去られていることに気づく。本の配置から、恐らく日記があった場所ではないかと感じる。
また、〈目星〉に成功するか、息子の部屋でペンが無いことに気づいていた場合は部屋にボールペンとシャーペンが転がっていることに気づく。
加えて、僅かではあるが争った形跡があることに気づく。
※小野田 智弘はアモンの≪支配≫を避けるため、自ら両目を抉りましたが、アモンが直接手を下したため死亡しました
※また、アモンは持ち去った小野田 智弘の日記から、又は探索者達の情報から「セント・ジェロームの剣修道団支部」の位置を特定します

探索者達が迅速に現場に向かっていた場合は、探索を終えたあたりで中村苫とその他警察官がやってくる。
〈聞き耳〉などに成功すれば、事前にそのことに気づけてもよい。ただし、玄関から発見されずに脱出することは難しいだろう。
発見された場合、彼らは探索者達に「ここで何をしている」と問い詰めてくるが、しばらくすると高野春香がやってきて適当に話をつけて探索者達を返してくれる。
高野春香は、探索者達に興奮した様子で話しかけてくる。
「事件現場の近くで亜門さんを見かけたって話を教えてくれただろ?だからここに来る前にちょっと辺りを探してみたんだよ。
そしたら亜門さんに会えたんだ!初めはとぼけたみたいに誤魔化してたんだけど、頑張って話しかけてたら色々教えてくれたよ!
亜門さんは何かを追ってるんだな!もうすぐ目的が達成できるって言ってて、協力も頼まれちゃったよ。本当に良かった!」
※探索者が亜門を見かけたことを教えていなかった場合、「虫の知らせがして」などと言わせましょう
※探索者達が事件現場にいなかった場合、興奮した様子で、高野春香が探偵事務所を訪ねてきます
高野春香に亜門の目的などについて質問した場合、「詳しく教えてくれなかったし、口止めもされてるんだ。眼を見て頼まれるとどうしても断れなくって。
でも、お前らにも明日協力を頼むと思うって言ってたよ」と話す。

この時点で中村苫の襲撃イベントが発生していない場合は、「中村苫の襲撃」の2.第3の事件後を参照すること。

【アモンからの連絡】


第3の事件後の翌日朝、または探索者達が「セント・ジェロームの剣修道団支部」に向かおうとした場合アモンから電話がかかってくる。
※もし、連絡先を交換していない場合は、高野春香から聞いたことにしたり、直接対面させたりしましょう
内容は「奴らの居所を突き止めた。隣町の林まで来てくれ」というもの。
その後の展開は、「セント・ジェロームの剣修道団支部」の2.アモンによる襲撃後を参照。

【セント・ジェロームの剣修道団支部】


セント・ジェロームの剣修道団支部は、探索者達が訪問するタイミングでその様子を大きく変える。
第3の事件後しばらくすると、アモンの襲撃を受けたことによって、セント・ジェロームの剣修道団は壊滅する。

1.アモンによる襲撃前
「中村苫の襲撃」をやり過ごし、そのまま道を進んでゆくと、古びたカトリックの教会に辿りつく。
教会の隣にある井戸には使われた形跡があり、人が住んでいることが分かる。
ただし、教会に近づいた時点で炎の塊(炎の精)のようなものがこちらへと突っ込んでくる。
それは探索者と教会の間で停まり、まるで教会へ訪れることを阻んでいるように見える。
長谷ヨセフが同行している場合、「こいつらは大丈夫だ」などと話しながら近づいて行き、炎の塊は下がってゆく。

探索者が無理やり教会へと入ろうとする場合や、その場から一向に帰ろうとしない場合は炎の塊が襲い掛かってくる。
炎の精との戦闘開始。あたりには井戸以外に水源が無く、戦闘は厳しいものになるだろう。
井戸からは1Rにバケツ1杯分の水をくむことができる。同時にくむことができるのは1人まで。
バケツの水2杯で撃退できるものとする。
炎の精を撃退した場合、教会の中に入ることができる。
※炎の精は人外、一度も教会に入ったことのない者などを襲います。また、9~11月の間は倒されてもしばらくすると復活します

教会にはいる時、何かの膜を抜けたような不思議な感覚がします。
中に入ると、長椅子が並んでおり、奥には十字架が飾られている。聖堂には30歳ごろに見える女が1人いる。
話しかけた場合、彼女はアガタと名乗る。そして、探索者達にここは初めてかと聞き、教会について説明する。
・ここは主の力を持って悪魔に対抗する人間が集まる場所
・もし、悪魔についてわからないのなら、資料室に行くとよい
・仲間になる場合、我々は個人で動き悪魔を探すため、徒党を組まないようにすること
・その理由は、いつ、だれが悪魔にとってかわられているかわからないため
・この教会内でも、お互いの接触は最小限に抑えられている
・もし悪魔に襲われた場合、この教会には悪魔を弱体化させる結界が張られているので逃げてくるとよい
・悪魔の兆候を見つけたら院長に知らせること
アガタは説明を終えると口を閉じる。
教会内部について聞く場合、それぞれについて説明してくれる。ただし、地下の部屋については話さない。
彼女や他のNPCに質問する場合、以下のように答える。
セント・ジェロームの剣修道団に所属する者たちは狂信的な部分もあり、特に悪魔に対する憎しみは強い。
彼らは自分たちの情報は殆ど話さず、悪魔に知られる可能性があるので教えられないと答える。
※彼らはクトゥルフ神話の怪物も全て悪魔と呼びます

・事件の被害者について
仲間だが、詳しいことは知らない

・長谷ヨセフや中村苫、その他NPCについて
お前たちの中に悪魔がいるかもしれない。生きている人間に関する質問には答えられない

・悪魔について
そこら中にいる。全て見つけ出して殺す
詳しい特徴が知りたければ資料室に行け

・中村苫に襲われた
悪魔だと判断されたのならしょうがない

・入口の炎について
いつのまにかいた。誰かが悪魔を追い返すために置いているのだろう
この時期(9~11月)は追い払っても再び現れるし、無理やりこの教会に入ろうとするものか、悪魔しか襲わないので放置している

・院長、リーダーについて
院長室にいる。修道士の取りまとめや情報の管理を行っている

・入口の膜について
悪魔に対する結界のような物らしい。中の者が招かない限り悪魔は入ることができないようだ

・合言葉などはないのか
そういったものを決めると油断の原因になる

・○○(NPC)は悪魔か?
そう思うのなら殺せ

食堂
小さなテーブルと机がいくつも置かれており、1人分のスペースで間仕切りがされている。
ここでは長谷ヨセフが食事を取っている。
彼を発見し問い詰めた場合、彼は隠すことを諦め、全てを話したうえで探索者達の能力を認め協力を願い出る。

寝室
シングルベッドかいくつか置かれており、それぞれ1人分のスペースで間仕切りされている。
中には2名のNPCがいる。

資料室
中には本棚がいくつかあり、聖書やそれに関連する書物がいくつも並んでいる。
悪魔に関する本を探す場合、〈図書館〉。成功すると、「ユダの悲哀の詩編」と書かれた日本語の本を発見する。
・ユダの悲哀の詩編 改変版
正気度喪失1/1D6、〈クトゥルフ神話〉に+3%、研究理解に13週間、ななめ読みに1時間。
斜め読みに成功した場合、この本は聖書から失われた話を記していることが分かる。
その多くは悪魔に関するもので、悪魔がいかに邪悪で、人間を誘惑してきたかが長々と記されている。
〈アイデア〉に成功すれば、話の整合性などから、訳者による改変が多く入っているのではないかと感じる。
また、本の最後の部分に「悪魔の特徴」と書かれており、様々な人間の字で以下のことが書かれている。
・月を見ると狼に変身する
・人間の生き血をすする
・腐肉を食べる
・嘘をつけない
・魚臭いにおいがする
・鉱石を好む
※クトゥルフ神話の知識がある探索者の場合、彼らが神話的生物と悪魔を混同していることが分かります

院長室
執務机が置いてあり、50歳程に見える男が座っている。
壁には十字架やマリア像などが置かれており、本棚には聖書やそれに関する本が揃っている。
〈目星〉に成功した場合、壁の一部分がやけに真新しいことに気づく。
※地下へと続く階段がありますが、院長である飯島マルコが魔術で隠しています
飯島マルコは探索者達と目を合わせないようにしつつ、新しい信者の方ですか?と話しかけてくる。
また、飯島マルコは英語の本を読んでいる。〈英語〉に成功した場合、その本のタイトルが「ユダの悲哀の詩編」であると分かる。
彼に質問する場合、他のNPCの知っていることに加え、以下のことを知っている。

・壁の違和感について
悪魔がそこに気づく可能性は少ないので、特別に教える
その先に私かある程度実績を上げた仲間しか入ることのできない部屋がある
中には悪魔に対する詳しい資料や修道団の活動記録がある

・壁の先の部屋に入れてほしい
悪魔を何体も始末すれば考える

・悪魔について
悪魔と言っても様々だ
我々は人に仇なすものを総称して悪魔と呼んでいる

・入口の炎、膜について
炎は私が用意した
悪魔を滅ぼすためであればどのような手段でもとる
膜は私の前任者が用意した
特定の悪魔には効果があるようだが、多くの悪魔に効果は無い

・なぜ眼を合わせないのか
眼を合わせることで人間を操る悪魔もいる

・本について
この本は見せられない。誰かが翻訳した物が資料室にあるのでそちらを見てほしい。

2.アモンによる襲撃後
第3の事件後しばらくすると、アモンの襲撃を受けたことによって、セント・ジェロームの剣修道団は壊滅する。
「アモンからの連絡」を受け、探索者達が林の入口まで来ると、高野春香とアモンがその場にいる。
アモンは探索者達を確認すると、「この先に奴らがいる。いくぞ」と言い、先へと進んでゆく。
この先にあるのが教会だと伝えた場合、行けばわかると答える。
高野春香は非常にテンションが高く、「亜門さんに頼ってもらえてうれしい」と話す。

林の中、けもの道を進んでゆくと、古びたカトリックの教会に辿りつく。
教会の隣にある井戸には使われた形跡があり、人が住んでいることが分かる。
教会の扉に向かうと、炎の塊がこちらに向かって飛び込んでくる。アモンが手で払いのけようとするが、その手が炎上する。
炎の精との戦闘開始。
炎の精は人外の存在であるアモンのみを狙う。アモンは「水を頼む」と探索者と春香に伝える。
アモンは炎の精に攻撃しようとせず、探索者達に水で撃退させようと考えている。
炎の精はアモンが手で払いのけたことによってダメージを負っており、バケツの水1杯で死亡する。
探索者が炎の精に水を掛けず、アモンに渡した場合、アモンはその水を炎の精に掛ける。
炎の精撃退後、アモンは「中に入るぞ」と声を掛ける。
探索者が教会の周りを一周するなどして見渡した場合、院長室の窓が割れていることに気づく。
その場合、アモンは窓から中に入ってゆく。
入口から入る場合、何か膜をくぐったような感触を得る。探索者達と高野春香が入っても、アモンは林の中を見ており入ってこない。
探索者が中に入るように招くか、高野春香が「亜門さんこっちに来てください!」などと招くと入ってくる。
※アモンは扉の結界を抜けることができないため、窓から入るか、誰かに招かれる必要があります
※先に教会を壊滅させた際は、窓から侵入し≪支配≫の呪文で「アザトースの書」に名前を記させることで壊滅させました

教会の中は、酷い腐臭に満ちている。
鋭い噛み傷を残した死体がいくつも転がっており、開け放たれた扉から見る限り、生き残っている者はいないようである。
探索者達は、この教会に何者かの襲撃があったことを確信する。
惨状を見てSANチェック
1/1D6
アモンはこの光景を見て、「襲撃者は一度立ち去ったようだな。何か手がかりがないか手分けして探すぞ」と話し、春香と共に教会の探索を始めます。
二手に分かれることにした場合、アモンは寝室のほうへと向かってゆきます。
※アモンは院長室にある隠し部屋の資料を処分したいと考えていますが、入口と同様の結界があるため入ることができません
※そのため、探索者達か高野春香に資料室の資料を持ってこさせようと考えています
※探索者達に違和感を与えないためにも、隠し部屋に向かいたくないアモンは分かれて行動しようと考えています
※探索者達がどうしても分かれようとしない場合は、諦めて教会の入口を突破した際と同様の手段を取ろうと考えます
※また、アモンは≪支配≫の呪文を2発撃てるだけのMPを残しています。探索者が1人でついていくなどした場合は、『アザトースの書』に名前を記させられる可能性があります

聖堂
アガタ(30歳頃の女性)の死体がある。死体は腐臭を放っており、体の大部分が噛みちぎられている。
〈医学〉に成功した場合、死体が腐っているのではなく、死体や部屋に何らかの理由でこびりついた匂いであることが分かる。
また、大型犬による噛み傷であることが分かる。

食堂、寝室
それぞれ2体ずつ死体が転がっている。
食堂にある遺体は、長谷ヨセフのもの。
〈医学〉に成功した場合、死体が腐っているのではなく、死体や部屋に何らかの理由でこびりついた匂いであることが分かる。
また、大型犬による噛み傷であることが分かる。

資料室
いくつかの資料が物色された形跡があるが、発見できる情報は襲撃前の物と特に変わりは無い。

院長室
飯島マルコ(50歳ごろの男性)の死体がある。
死体は、右手にナイフを持っている他、右胸と左胸に大きな穴が開いている。
部屋には争ったような痕跡がある。
また、壁には四角い穴があいており、地下へと階段が続いている。
この穴を通る場合、何か膜をくぐったような感触を得る。
階段は第2資料室に続いている。

第2資料室
中には様々な資料のような物が収められている。資料は「セント・ジェロームの剣修道団の日本支部」に関するもののようである。
その内容は、いつどこで悪魔の兆候があったか、どのように処分したかなど。怪奇現象を全て悪魔と結び付けていたこと、過激な手段も容赦なく選んでいたことが分かる。
教会についての資料も置かれており、入口の膜について、中から招かない限り悪魔の立ち入りを禁じる結界であることが分かる。
加えて、この教会内には悪魔自身も気づかぬうちに能力を制限させる結界があることも分かる。

その他に、ナイフなど、刃を持った武器がいくつか置かれており、机の上には書きかけと思しき本が置かれている。
※これらの武器は、≪刀身への祝福≫(基本273P)が掛けられています
机の上に置かれている書きかけの本には、「ユダの悲哀の詩編」というタイトルが付けられている。
どうやら、何者かが新しく翻訳を試みていたのだと分かる。
・ユダの悲哀の詩編 日本語版
聖書から失われた本の1つであり、悪魔について多く論じられている。
正気度喪失1/1D6、〈クトゥルフ神話〉に+3%、研究理解に5週間、ななめ読みに1時間。
呪文≪刀身への祝福≫が含まれている。

〈目星〉に成功した場合、資料の山の中から古びた英語の巻物を見つける。巻物は乱雑に扱われているようで、大事にされている様子は無い。
〈英語〉に成功した場合、ネスターと呼ばれる人間の言葉を集めた巻物であることが分かる。
また、巻物をざっと見た場合、入口で見た炎の塊によく似た図が記されていることが分かる。
・ネスター書簡
1巻のみのため、<聖なる炎を送る>(炎の精の召喚/従属)(基本283P、191P)以外を読み取ることはできない。
1巻を解読した場合。
1/1D3の正気度喪失。3%のクトゥルフ神話技能。
平均13週間の解読期間/斜め読みに8時間。

【アモンの正体】


※アモンはこの教会にある資料について知ると、たいしたことが無いと判断し、探索者の処分を決めます
※アモンは教会に張られている結界や、関係者の処分などによって弱体化しています
※ただし、≪支配≫の呪文を1~2発撃つ程度のMPは残っているため、探索者達を処分することは可能だと考えています
第2資料室を探索し、アモンと合流すると「何か見つかったか?」と話しかけてくる。
第2資料室に合った本や巻物を見せた場合、それを渡してくれと頼まれる。
何も持ってきていなかった場合や、何もなかったと答えた場合は「その程度なら不要か」と答える。
本や巻物を渡した場合も、渡さなかった場合も、アモンは不気味な装丁の本(アザトースの書)とペンを取り出す。
開かれた本のページには、今までの事件の犠牲者と思われる名前の他、高野春香の名が記されている。
※高野春香に名前のことを聞いた場合、二人っきりの時に頼まれたと話します
探索者達の中から、適切だと思われる者1人を選び、眼を見つめながら、「この本に名前を書いてくれ」と話す。
話しかけられた探索者は、眼をそらさない限り、アモンの≪支配≫によりその命令に従ってしまう。
アモンは続けて、もう1人の探索者の眼を見つめると、「この本に名前を書いてくれ」と頼んでくる。
同じように全員に頼むが、≪支配≫の呪文を使用するかはKPの判断による。
全員に尋ねた後、アモンが話しかけてくる。
「お前たちは全員始末することにした。この男の姿も捨てて、お前らのものを貰うとしよう。
この男はゴミのように死んだが少しは楽しませてくれたぞ。お前らも少しは楽しませてくれ。
いくぞ、狩りの始まりだ」
そういうと同時に、辺りと、アモンの様子が変化する。
「辺りが荒漠と広がる夜の大地へと変わる。その中心にいる男が、まるで衣服を脱ぎ捨てるかのように、自身の皮を剥ぎ取った。
そこに現れたのは、犬のような牙をのぞかせる、大烏の頭部を持つ男性だ。蛇の尾を持つその男は、頭部に2本の巨大な山羊の角を持っていた。
続けて、漠々とした荒野の影から腐臭を放つ犬の群れが現れる。肉が削げ落ち、動く死体ともいえるその犬は、粘着質の液体を滴らせ、牙を突きだした。
その犬は、高野春香と(その他『アザトースの書』に名前を書いた探索者)を取り囲むと、一斉に襲い掛かった」
角を持つ男、荒野の狩猟を見てSANチェック
1D3/1D10

以降は、アモンとアンデッドの猟犬3匹との戦闘。アンデッドの猟犬は『アザトースの書』に名前を記したもののみを襲う。
アンデッドの猟犬と戦闘を行えるものは『アザトースの書』に名前を記したもののみとする。
名前を記さなかった探索者はアンデッドの猟犬3匹の存在をどこか希薄なものに感じ、触れることができないのではと考える。
以下は、想定される戦闘のパターン。
1.全員が『アザトースの書』に名前を記した場合
全員が猟犬のターゲットになる。アンデッドの猟犬3体との戦闘を行い、勝利した場合はアモンとの戦闘に入る。
高野春香は亜門の名を呼び茫然としているが、探索者が何らかの励ましを行った場合は1ターン目から、そうでない場合も2ターン目から戦闘に参加する。

2.探索者の一部が『アザトースの書』に名前を記した場合
名前を記さなかった人間は、アモンとの戦闘に入る。
名前を記した人間は、アンデッドの猟犬3体との戦闘に入る。勝利した場合、アモンとの戦闘に参加可能。
高野春香は亜門の名を呼び茫然としているが、探索者が何らかの励ましを行った場合は1ターン目から、そうでない場合も2ターン目から戦闘に参加する。
ただし、名前を記した探索者が全く戦闘のできない探索者の場合、高野春香は茫然とせず、探索者を守るために行動する。
その場合戦闘処理は行わず、高野春香は探索者達とアモンとの戦闘中、4ラウンドの間探索者を守ることができるものとする。
4ラウンド目に高野春香はアンデッドの猟犬1匹を倒すものの、手傷を負い、5R目の終わりに死亡する。

3.高野春香のみが『アザトースの書』に名前を記した場合
探索者達はアモンとの戦闘に入る。
高野春香はアンデッドの猟犬3匹に囲まれ、亜門の名を呼び茫然としている。
探索者が何らかの励ましを行った場合、彼女はすぐに気を持ち直す。
すぐに気を持ち直した場合は、5ラウンド、そうでなかった場合は3ラウンドの間、彼女はアンデッドの猟犬の攻撃から耐えることができる。

アンデッドの猟犬と、弱体化したアモンのステータスは以下の通り。

アンデッドの猟犬
STR7 CON11 SIZ5 POW7 DEX13 HP8
武器
噛みつき 30% 1D6

アモン(角を持つ男)
STR15 CON30 SIZ20 INT43 POW25 DEX10 HP25 MP0 DB+1D6
武器
こぶし 70% 1D3+DB
角で突く 40% 1D6+DB
※気絶はしないものとします
※アモンがまだ≪支配≫の呪文を撃てる場合、対象になった探索者はそのR中アモンの攻撃を回避できません
※≪支配≫の対象にならないよう目をそらすと、その間全ての技能の成功率が-10されます
※探索者の強さによっては、HP回復に回すMPを残すとよいかもしれません(1MPで1D10回復)

【シナリオエンド】


アモンを倒した場合、辺りは元の景色に戻り、猟犬の姿も消え去る。
高野春香が生存していた場合、探索者達に「亜門さんはもう死んだんだな……」と話しかけてくる。
適当に声をかければ、彼女は「これからは自分の力で頑張って行くか」と元気を取り戻す。
もし、長谷ヨセフなどが生き残っていた場合、彼は「悪魔を倒したんだ!」と酷くはしゃぐ。

探索者達は、人類を誑かしつづけてきた悪魔の1柱であるアモンを無事撃退した。
世界はまた少し平和に近づいただろう。
1D10の正気度回復。高野春香が生存した場合は追加で1D6。
その他、セント・ジェロームの剣修道団メンバーが生存した場合はKPの判断で追加の報酬を与える。