- Cthulhu Scenario Storage|クトゥルフシナリオストレージ - 蠢くものたちの家

蠢くものたちの家

【このシナリオについて】

シナリオ傾向:クローズド、現代
推奨人数:3人~
戦闘:有り
推定プレイ時間:2~3時間
難易度:ふつう
システム:クトゥルフ神話TRPG

【あらすじ】


探索者たちには藤田 勝男というオカルトマニアの友人がいる。
オカルトスポットを巡る旅に出かけた藤田だったが、どういうわけか予定から3週間たっても帰ってこない。
周囲の人間が藤田の安否を気に掛ける中、探索者たちは藤田からオカルト愛好家が集う洋館「蠢くものたちの家」への招待を受ける。

推奨技能:基本的な探索技能、戦闘技能、〈運転〉、〈オカルト〉、〈機械修理〉など。オカルト好きな探索者だとより楽しめる。

【シナリオについて/舞台設定】


本シナリオの舞台である洋館「蠢くものたちの家」は、松谷静香という女性が所有している。
松谷は既に100を超える老人だが、魔術により肉体を若く保っており、外見は30ほどに見える。
しかし、魔術で生きながらえることに限界感じている彼女は、自身の不老不死のための実験場として、「蠢くものたちの家」を利用している。
その実験の内容とは、神話生物であるショゴスを用いたものだ。彼女は、ショゴスと人間を一体化させることにより、不老不死を得ようと考えている。
しかし、その実験は遅々として進んでいない。偶然によりきわめて小さなショゴスを手に入れた彼女だったが、それを従わせる術は持っていなかった。
彼女は知能を低下させたショゴスを独自の技術で培養し、自身に従わせるよう試みたが、その方法で生まれるショゴスは本来の者より劣った性質を持っていた。
それでも、彼女はその劣化ショゴスを利用し実験を続けている。それは、人間の細胞をショゴスに置き換え不老不死を目指すものだ。
長らく人間を犠牲にし続けた彼女は、現在は噂につられて集まったオカルトマニアを実験材料にしている。
しかし、半ば狂気に堕ち盲目的に同じ実験を繰り返す彼女が不老不死に辿り着くことはない。
探索者たちは長らく人間を犠牲にし続けてきた彼女を止め、「蠢くものたちの家」から逃れなければならない。

【資料】


NPC
松谷 静代 魔術師 女 135歳 155cm 45kg
STR11 CON12 POW21 DEX11 APP14 SIZ13 INT16 EDU21 HP13 MP21 SAN0 アイデア80 幸運99 知識99
「蠢く者たちの家」を所有する30歳ほどに見える美しい女性。
その正体は魔術で若さを保った老練な魔術師である。
自身の不老不死を目指し研究を続けており、「蠢く者たちの家」で多くの犠牲者を実験材料にしている。

技能
説得80、ラテン語78

知識
化学70、クトゥルフ神話40、経理70、心理学85、人類学51、生物学80、電子工学32、薬学70

呪文
≪レレイの霧の創造≫292P 2MP消費
目の前の3mx3mx5mの卵形の空間に霧を発生させる。霧は1d6+4ラウンド続く。
≪被害をそらす≫278P 1MP 1SAN消費
ダメージを同値のMPを消費しそらすことができる。
≪ヴールの印≫252P 1MP 1SAN消費
呪文の成功率を5%あげる。
≪手足の委縮≫272P 8MP 1DSAN消費
10m以内の対象の一人とMP対抗ロール。成功すれば対象の手足のうちどれか一つをしぼませ縮ませる。
対象は耐久力を1D8ポイント失い、CON3ポイントを永久的に失う。犠牲者と目撃者は0/1D3の正気度喪失。
≪命の糧≫252P
犠牲者の血肉を摂取することでSIZ1につき1か月寿命を延ばす。

その他、KPが必要だと判断した呪文を習得している。


藤田 勝男 26歳 男性 オカルトマニア
彼は人好きのする気さくな性格で、探索者ともよい友人関係にある。
オカルトに関することに目がない彼は、大学卒業後、定職にはついていない。
日雇いや短期の仕事をつづけ、金がたまれば日本中のオカルトスポットを周っている。

青坊主(永見 直人) 28歳 男性 オカルトマニア
STR12 CON11 POW12 DEX12 APP7 SIZ17 INT11 EDU14 HP14 MP12 DB+1d4
大柄で坊主頭の男性。穏やかな物腰だが、オカルトの話になると少し熱くなる。
フリーターであり、藤田と同じように日本中を旅している。
彼の運営するブログは豊富な写真が反響を得ていた。

ふらんけん(川崎 賢次) 41歳 男性 オカルトマニア
STR11 CON12 POW7 DEX7 APP12 SIZ13 INT9 EDU16 HP11 MP7 DBなし
幼い頃に犬に噛まれ、顔に大きな縫い傷がある。ぎこちない喋り方で、頭の回転は速くない。
しかし、オカルトに対する知識は深く、一度オカルトの話になると別人のように聡明な印象を与える。
彼の運営するブログは、更新頻度は低いものの密度の高い文章が掲載されていた。

ネコツキ(汐見 真子) 22歳 女性 オカルトマニア
STR8 CON6 POW8 DEX7 APP13 SIZ14 INT13 EDU12 HP10 MP8 DBなし
オカルト界隈では有名なコスプレイヤー。オカルト要素を取り入れたコスプレが特徴。
似たような女性が少ない事もあり、一部での人気は高い。ちやほやされるのが好きな軽い性格。

神野 鈴彦 54歳 男性 オカルト作家
STR12 CON13 POW13 DEX9 APP12 SIZ14 INT15 EDU19 HP14 MP13 DB+1d4
中堅作家。オカルトを題材にした作品を多く執筆しており、一部での人気は高い。
反面、一般受けはしておらず、本人は悩みを抱えていた。
数年前、「蠢くものたちの家」を訪れてから作品の発表は行っていない。
彼はその体のほぼ全てが松谷によって劣化ショゴスに置き換えられている。
そのため、知性はほとんど残っておらず、話しかけても曖昧な返事をするばかりである。
彼は自らの身体を劣化ショゴスに喰らい尽くされる前に、他の人間を自ら喰うことで生き延びている。

中崎 裕也 22歳 男性 大学生
「蠢く者たちの家」で最初に犠牲になったオカルトマニア。
2000年初頭にオカルト系のテキストサイトを運営していた。
資産家の出であり、金銭的な余裕があった彼は、持ち前の行動力と合わせて様々なオカルトスポットを巡った。
そのレポートをテキストサイトに掲載しており、当時は高い人気を誇っていた。
現在、彼のサイトはサーバー運営会社の倒産に伴い閉鎖している。
彼のサイトについて調べる場合、〈コンピュータ〉に成功すれば「蠢く軟体人間を発見!」というページが最後に更新されていたことが分かる。
それ以上の事はデータが残っておらず分からない。

MAP


【導入】


本シナリオは、探索者たちが「蠢くものたちの家」に向かった藤田に会いにゆく必要がある。
そのため、探索者たちの中に1人は藤田の友人が必要である。
オカルトマニアであれば、同好の士として「蠢くものたちの家」に向かわせやすい。
両親に心配されている藤田を連れ戻そうとする正義感の強い探索者も同様である。
藤田は26歳のフリーターとして設定しているが、探索者の設定に応じて変更してもよいだろう。

季節は冬、探索者たちは、友人の藤田を気にかけていた。
その理由は、オカルトスポットかつ、オカルト愛好家が集う洋館、「蠢くものたちの家」に向かった藤田が一向に姿を見せないためだ。
元来、短期の仕事を続けた後は日本中の様々なオカルトスポットに向かっていた彼だが、今回は一週間の旅行の予定が、既に一か月経過している。
実家にも戻っていないらしく、一度、探索者の元に心配する両親からの連絡が来ている。
探索者達が彼に連絡しても、電話は出ず、メールは帰ってこず、LINEなどを利用していた場合は既読すらつかない。
旅先で何かあったのではないか、と考えているかもしれない探索者の元に、藤田勝男の携帯電話から電話が掛かってくる。
電話先の声は間違いなく藤田のものだ。藤田は、まるで何も気にしていない様子で、気さくに語りかけてくる。
※探索者の中に〈オカルト〉技能を持つ者がいた場合、その中で最も高い値の探索者に連絡が来ます
※探索者が彼にテキストでのメッセージを送っていた場合、彼が確認するのはこのタイミングになります

「よう! しばらく連絡してなくてすまんな! こっちが楽しすぎて携帯を見るの忘れてたよ」

・一か月ほど連絡がなかったことを指摘した場合
「え? 一週間くらいじゃなかったのか? ……すまん! 埋め合わせはするから許してくれ!」

・特に何も言わなかった場合や、何をしていたのか聞いた場合
「いやあ、"蠢くものたちの家"が予想以上に楽しくてな! 毎晩遅くまで話し込んでたら、いつのまにか時間が経ってたんだよ。
それで、お前たちも誘おうと思ったってわけさ。ここにいる人たちは本当に素晴らしいぜ!
青坊主さん、ふらんけんさん、ネコツキさん……聞いたことないか? あとは、神野鈴彦先生もいるんだ!
それに、貴重な資料もたくさんある! とにかく一回来てくれよ!」
※この時点で、一度〈オカルト〉で判定を行います
・〈オカルト〉を50以上持っているか、それ以下の場合は〈オカルト〉の判定に成功した場合
青坊主、ふらんけんは有名なオカルトブロガー、ネコツキはオカルト系のコスプレイヤー、神野鈴彦は中堅のオカルト作家であることが分かる。
後程インターネットで彼らを調べるか、〈オカルト〉に成功した場合彼らがここ1年~数か月前から活動していなかったことが分かる。
※その他、オカルト関係の人物であれば探索者たちの気を引けそうな者の名前をあげてもよいでしょう

・蠢くものたちの家について聞いた場合
「オカルト好きが集う洋館だよ。まあ、知る人ぞ知るって感じかな。元々色々ないわくがあった屋敷をあるオカルト愛好家……松谷さんが相続してね。
それで、知り合いのオカルト好きを招待しだして今に至るってわけ。
オカルト愛好家とは、世界の隠されたものを暴こうと蠢くものだってことで、この屋敷にいる奴は全員蠢くものを自称するんだよ。だから、蠢くものたちの家なんだ」

・松谷について聞いた場合
「松谷 静香さんっていうんだ。かなりのオカルトマニアだな。それに、なかなかの美人だぜ! 莫大な遺産を相続したらしくて、暇みたいでさ。 
だから毎日俺たちと話し込んでるんだよ。ほんと、ここは最高だよ!」

電話の最後に、藤田は「蠢くものたちの家」の住所(箱根近くの山奥)を伝えると、待ってるからな!と話す。

・「蠢くものたちの家」の情報
単純に「蠢くものたちの家」というワードのみで調べた場合、インターネットや図書館に該当する情報はない。
住所などから調べた場合、〈図書館〉や〈コンピュータ〉に成功すると、松谷 次郎という金持ちが明治時代に別荘として建築したことが分かる。
松谷 次郎についても調べた場合、株で大儲けしたいわゆる成金であること、松谷 静代という妻がいたこと、大変なオカルト愛好家だったことが分かる。
また、彼は若くして土砂崩れで死亡しており、その莫大な財産を相続した妻は彼が建築した別荘で隠れるように暮らしたという。
加えて松谷 次郎の命を奪った土砂崩れは、「蠢くものたちの家」がある山奥周辺でよく起きており、現在も時折犠牲者が出ていることが分かる。
※松谷静代は劣化ショゴスを操り発生させた土砂崩れで不要な人間を始末することがあります

【蠢くものたちの家で起きていること】


蠢くものたちの家は、松谷 静代が魔術により洗脳した明治時代の成金、松谷 次郎により建築された。
彼女は、明治の時点で老練した魔術師だった。魔術で若く保った肉体で松谷に近づくと、自身の研究の拠点として別荘を建築させたのである。
そして、松谷 次郎の名を使い、様々な資料(オカルト品)を集めたのち、松谷 次郎を違和感の無いよう死亡させ、その財産を手に入れた。
その後、時代と共に名を変え、彼女は「蠢くものたちの家」で研究を続けている。
現在は松谷 静代の孫である松谷 静香を名乗っているが、これは魔術などを用いて法的にも完璧な工作が行われており、彼女に法的な問題は全くない。

彼女が行っている劣化ショゴスに関する研究は、ある時期から遅々として進んでいないが、一定の成果を得ることはできている。
彼女は、人体をショゴスに置き換えるため、劣化ショゴスに「食したものに変化する」という性質を持たせることに成功したのだ。
彼女はこの性質を利用し、「蠢くものたちの家」そのものと、訪れた人間、更には「蠢くものたちの家」周辺の山地を劣化ショゴスに置き換えている。
ただし、あくまでも生物である劣化ショゴスは機械など複雑な構造を持つ無機物は完全には模倣できない。
また、変化の過程で電気と炎に対する耐性は失われ、炎に弱いという弱点も生まれたため、「蠢くものたちの家」の一部は変化していない。
しかし、この方法にはいくつかの問題があった。
1つは、劣化ショゴスの変化は完璧ではない事である。建物のような無機物であれば問題ないものの、人体、とりわけ脳に完璧に変化することができなかったのだ。
高い知性を持たせないため、ショゴスから脳を形成する機能を制限し生み出された劣化ショゴスは、皮肉にも彼女の目的を達成するためにはもっとも不向きだったのである。
劣化ショゴスが人体を完全に食し、その身体を置き換えた場合、知能の低く、人体としての形も維持できない化け物になってしまう。
2つ目は、全ての劣化ショゴスは大元となったショゴス無しには制御できない点である。
脳を持たない、アメーバのような存在である劣化ショゴスを動かすためには、大元となったショゴスを介して信号を送る必要があった。
ショゴスを介して信号を送ること自体は、大元となったショゴスを反抗の意思すら芽生えぬほどに小型化させることによって実現できた。
これにより、劣化ショゴスに置き換えられた人間を自由に操ることができるようになる。
しかし、大元であるショゴスからの信号が途絶えれば、劣化ショゴス達は周囲の物全てを本能のままに食らいつくし、最後には身体を維持できなくなり死滅する。
これらの問題を解決する必要があったが、研究の半ばで狂気に陥った彼女は、今は何かを信じて洋館に現れた人間を劣化ショゴスへと置き換え続けている。

「蠢くものたちの家」という名は、劣化ショゴスに置き換えられた人間たちが蠢いているさまを見た人間がつけた名である。
その噂はやがて広まり、興味を持ったオカルト愛好家達がこの洋館を訪れたことで、松谷は彼らを利用することを決めた。
真実を知る者を始末すると、「蠢くものたちの家」の由来をねつ造し、自身が蒐集したオカルト価値の高い物品を用いて彼らを滞在させ、実験材料とした。
身体が劣化ショゴスに置き換わる直前、つまり処分の前に彼らの友人を呼び出させ、その過程で探索者たちもこの洋館に招かれることになる。

藤田勝男は一週間ほど「蠢くものたちの家」に滞在し、その後身体が劣化ショゴスに置き換わる過程で3週間意識を失っていた。
現在の藤田は身体に劣化ショゴスが巣食っており、松谷がショゴスを介して出す命令の信号に操られることがある。
しかし、藤田にはまだ人間の部分も多く残っており、探索者たちが迅速に行動すれば、彼が助かる可能性はある。
もしそうでなければ、重大な臓器を体に巣食う劣化ショゴスに食われてしまい、もはや劣化ショゴスを取り除くことはできなくなるだろう。
この洋館に滞在している、青坊主、ふらんけん、ネコツキ、神野鈴彦は既に体の大部分が劣化ショゴスに置き換わっており、松谷の支配下にある。
もはや、彼らを救う方法は存在しないだろう。

【蠢くものたちの家までの道のり】


探索者たちは、いずれ蠢くものたちの家に向かうことになるだろう。蠢く者たちの家は箱根の山奥にある。
交通の便は悪く、車で向かうことになるだろう。「蠢く者たちの家」近くでは土砂崩れが多く起こっている。
地元での聞き込みや、道中に〈目星〉(土砂崩れ注意の標識を多く見つける)に成功すればそのような情報が入手できる。
なお、蠢くものたちの家への到着はシナリオの都合上夕方となる。

しばらく車を走らせ、住所を頼りに車1台が通れる程度の舗装されていない山道を進んでゆくと一軒の洋館が見えてくる。
それは古き良き情緒を感じさせる佇まいだが、オカルト的な不気味さは無く、よく手入れがされているのか真新しさも感じさせる。
洋館の前には3台ほど車が止まっているが、1台を除きほとんど使われている気配はなく、うち1台は数年ほど動かされていないと感じる。
※車はそれぞれ松谷、神野、川崎(ふらんけん)のものです
※家は劣化ショゴスによって置き換えられているため清潔に保たれていますが、車はそうでないため手入れがなければ汚れています

車を調べる場合、それぞれ以下のことが分かる。現時点で調べる意味合いは薄いだろう。
・使われている様子がある車
やや古い型だが、高級車である。
〈目星〉に成功すれば座席の間に財布が落ちていることが分かる。
車には鍵がかかっているため、財布を調べる場合は鍵を開ける必要がある。
財布を調べると、中崎 裕也という男性の免許証が出てくる。免許証の有効期限は15年前に切れている。
中崎 裕也についてはNPCの部分を参照。
インターネットなどで名前を調べた場合、15年ほど前に行方不明になり未だ発見されていない大学生だと分かる。
後程藤田に聞いた場合、以下のように答える。
「中崎裕也……? 
……昔人気があったオカルトサイトの管理人がY.Nakazakiって名前だったけど、関係ないよな?」
※松谷が食料の買い出しなどに時折使用している車です

・もっとも古びた車
手入れもされておらず、ここ数年は使われた痕跡がない。
外からの〈目星〉に成功すれば、物書きが使用していたであろう痕跡がいくつか見つかる。
※この車は神野が使用していたもので、彼の部屋にある鍵を入手すれば運転を試みることができます
※その場合、〈機械修理〉、〈電気修理〉などでメンテナンスを行わない限り、〈運転〉-20に成功しなければ運転できません

・少し古びた車
しばらく使われていないようで車体は汚れているが、タイヤの空気などは抜けておらず、問題なく動くように見える。
車内にはオカルトグッズが雑多に並べられている。
車内を調べるか、〈目星〉に成功すればタバコの吸い殻を見つける。
※この車は川崎(ふらんけん)のもので、現在でも何の問題も無く使用できます
※今回登場するNPCで喫煙者は彼だけですが、現在、完全に松谷に支配されるようになった彼はタバコを吸いません
※藤田に喫煙者がいないか聞いた場合、「そういえば、最近は見ないけどふらんけんさんが吸ってた気がするな」などと話します

【蠢くものたちの家】


蠢くものたちの家に到着すると、探索者達の友人である藤田と家の持ち主である松谷 静香が探索者達を出迎える。
松谷は30ほどに見える女性で、和風の美人といった顔立ちをしている。どこか気品のある服装も相まって、まさしく洋館の女主人といった雰囲気だ。
松谷は自己紹介をしつつ、「蠢くものたちの家にようこそ。ゆっくりと過ごしてくださいね」などと話す。
藤田は探索者を見ると喜びの声を上げる。「おお! 来てくれたのか! 早速だが松谷さんとネコツキさんが夕食を用意してくれてるぞ!
めちゃくちゃうまいぞ! 2階の客室が空いてるから、荷物を置いたら食堂に来いよ! オカルト話をしながらの食事は最高だぜ!」
などと話す。その間、松谷は楽しげに笑っている。
探索者たちがその理由を聞いた場合、「この山奥に1人だと何もやることがありませんから、皆さんが賑やかにしてくださって嬉しいんです」などと答える。
※松谷の本心は実験の材料を絶やしたくないというものですが、老練な魔術師であり外見さえ魔術で変更している彼女から〈心理学〉で本心を読み取ることは難しいです

続けて藤田は、部屋の割り振りについて説明する。探索者たちの人数によって余らせる部屋の数が変わることになるため、KPは場合によって割り振りを変更すること。
ただし、神野は必ず一階の客室を使用する。青坊主、ふらんけん、ネコツキは2階左側の客室を一室ずつ使用するが、青坊主とふらんけんを同室にしてもよい。
藤田も一室を使用する。探索者たちは、藤田の述べた空き部屋の中から利用する部屋を選ぶことになるだろう。
探索者たちを相部屋にするなどしても部屋が足りない場合は、応接室を利用させてもよいだろう。

洋館の間取りを知った段階で、〈知識〉の判定を行う。成功した場合、一階にプライベートな空間である寝室があることは珍しいと感じる。
このことを松谷に聞いた場合、「私の高祖父の松谷 次郎という人がこの洋館を建てたんですが、随分人好きな性格だったそうで、こういう間取りになったみたいです。
客室も多いでしょう? それ以来、私たちの一族はずうっとここに人を招いて暮らしてるんです」などと答える。
その他、松谷に質問する場合は後述のイベント「夕食」も参照すること。

藤田は浮かれた様子で探索者たちを部屋へと案内する。その様子は「蠢くものたちの家」を心の底から楽しんでおり、探索者たちが来たことを非常に喜ばしく思っているように見える。
移動中、藤田に質問した場合以下のように答える。
なお、藤田は微弱ながら体の一部を構成する劣化ショゴスから松谷の支配を受けており、「蠢くものたちの家」の真相に近いことは話さない。

・青坊主、ふらんけん、ネコツキ、神野について
青坊主、ふらんけんに関しては資料のNPCに記してある特徴を話す。
ネコツキはその情報に加えて、「ずっと吸血鬼メイド? のコスプレをしていて、本当にメイドさんみたいなことをしてくれてるぜ! 料理作ったり、掃除したり。ほんと助かるよ。かわいいしな!」と話す。
神野もNPC部分の情報に加えて、「俺が来たころにはもう部屋から出てこなくなってるんだ。部屋にいけば話してくれるけど、小説を書き始めたらしくて会話中はずっと上の空って感じだな。
でも、あの神野先生と一つ屋根の下にいるってだけでめちゃくちゃ興奮するだろ? な?」などと話す。

・松谷について
「綺麗だし、博識だし、本当になんでもできる人さ! この館にいる中で一番オカルトに詳しいのは松谷さんだろうな。
なんせ、書斎にある本の内容を全部覚えてるそうだからな。話していても驚かされることばっかりだよ
大体は寝室にいるけど、食事のときは食堂にくるぜ」

・書斎について
「希少本だらけだぜ! 読んでも読んでも無くならないくらいある! 松谷さんのひいひいおじいさんが大のオカルト好きで、色々集めたって話だよ。
松谷さんもそれを読んで育ったらしくてな。まさに英才教育だな! 羨ましいぜ!」

・蠢くものたちの家にどれほど滞在するのか
「うーん。まだ決めてないけど、もう結構な期間になるみたいだからな。でも、ずっとここにいるってのもいいような気もするんだよな
ほんと、ここは最高の場所だよ!」

探索者たちが部屋を決め、荷物を下ろせば夕食の時間となる。

【夕食】


食堂では青坊主、ふらんけん、藤田が席についており、ネコツキと松谷が食事を運んでくる。食事は豪華な洋食といった感じのもので、非常に食欲をそそる。
ネコツキは探索者達にも世話を焼いて回る。礼などを言うと、「吸血鬼メイドなんです♪」などと愛想よく答える。
配膳が済むと、松谷が「それでは、本日もこのように集まれたことに感謝しましょう」などと話し、食事が始まる。
はじめに、青坊主、ふらんけん、ネコツキらが探索者たちに自己紹介を行う。
食事中は青坊主やふらんけんを中心に様々なオカルト話が飛び交い、時折松谷や藤田が口を挟む。探索者たちは、彼らのオカルト知識の深さを感じるだろう。
会話の内容自体は、UFOやUMAなどの話から、幽霊、「蠢くものたちの家」がある箱根の民話など、様々なものだ。
青坊主は穏やかな物腰を一転させてオカルト的存在が実在すると熱弁し、ふらんけんはどちらかというと知識を深めることを楽しんでいるのだと感じさせる。
継続探索者がいれば、その経験に大いに興味が持たれるだろう。
ネコツキはあまり話を理解していないようで、会話には入らない。彼女は少しすると、キッチンのほうから1人分の食事を持ってくる。
食事を持った彼女は、「神野さんに持っていきますね」と言い食堂から出ていく。男性陣はその行いをこぞって褒め、ネコツキは満足げな表情を浮かべる。
探索者たちが共に神野の部屋に向かう場合は、後述の「神野の部屋」を参照。ネコツキは神野の部屋に食事を置くとすぐに戻ってくる。
この夕食での会話に参加した探索者は、〈オカルト〉に成長チェックを得る。
後ほどの描写に影響するので、KPは誰が食事をとったのか覚えておくこと。

松谷に質問をした場合、以下のように答える。
・家族について
「数年前に父と母が事故で亡くなりまして、この屋敷を相続しました。生活するのには困らないくらいの財産はあったのですけれど、急に1人になったので寂しくって。
でも、今は皆さんがいるのでとても楽しいですわ」

・来客について
「今日の(探索者)さん達のように、友人の繋がりでいらっしゃる方が多いです。今いらっしゃる方々のように長く滞在してくれる方もいれば、すぐに帰る方もいますわ。
今一番長いのは、神野さんかしら? 確か、5年くらい前からいたはずだから」

・過去の来客について
「私がまだ幼かった頃から、色々な方がいらっしゃってました。今は、私の好きなオカルト愛好家の方ばっかりですけど」

・食糧について
「私が一週間に1度ほど車で町まで下りています。皆さんの手を煩わせるわけにはいきませんからね」

・土砂崩れについて
「この館を訪れた方は不思議と被害にあったことがないんですよ。ですから、きっと大丈夫です」

【蠢くものたちの家の探索】


夕食後、探索者たちは洋館の部屋を周ったり、藤田を連れ帰ろうとしたりするだろう。
藤田を連れ帰ろうとした場合、藤田自身はそれを断固として拒否する。松谷に微弱ながら支配され、帰る意思がないためだ。
探索者が交渉技能を使用した場合でも、藤田は困惑した顔を浮かべつつも「いや……帰らない!」と声を上げる。
会話が続けば青坊主、ふらんけん、ネコツキ、松谷らが現れて口々に「あなた達もここで過ごしましょう」と述べる。

藤田を連れ帰る場合、彼を気絶させるなどして強引に連れだすしかないだろう。
その際、物音を立てるなどして松谷に気付かれていた場合、帰りの道中で土砂崩れに襲われる。
〈運転〉に成功しない限り土砂崩れに巻き込まれ、車は完全に動かなくなる。蠢くものたちの家に引き返すほかないだろう。
その場合、松谷は素知らぬ顔をして探索者を出迎える。

藤田を連れ帰ることに成功した場合でも、彼の体に巣食う生物が消えるわけではない。
しばらくすると藤田は苦しげな声を上げのたうちまわったあと意識を失う。病院などでもどのような病気なのかは判明しない。
蠢くものたちの家で食事をとっていた場合、探索者の身体にも変化が起こる。後述の「深夜の怪奇現象」を参考にすること。
いずれにせよ、蠢くものたちの家に戻るほかないだろう。

夕食後、青坊主、ふらんけん、ネコツキ、藤田らはそれぞれ適当な場所でくつろいでいる。部屋にいることは少ない。
特に何もなければ、ふらんけんは書斎。青坊主、ネコツキ、藤田は遊戯室にいる。
就寝時間の前になると、彼らは応接室に集まりオカルト話に花を咲かせた後、部屋に戻り眠りにつく。
ネコツキは眠る前に「お掃除♪お掃除♪」と口ずさみながら洋館を一通り掃除して回る。その掃除の様子は一見適当のように見えるが、洋館は清潔に保たれている。

それぞれ、部屋の様子は以下の通りである。
青坊主やふらんけん、ネコツキの部屋を調べるのは彼らの異常に気付き、探索者達が身の危険を感じ始めてからになるだろう。

書斎
広い部屋だが、本棚で埋め尽くされており古今東西様々な古書・希少本が集められている。
その多くはこの館の最初の持ち主である松谷 次郎が集めたものらしい。
ここではオカルト本を読み進めることで〈オカルト〉技能を向上させることができる。
探索者がオカルト本を読むことを望んだ場合、基本ルールブック102Pのオカルト本の例などを参考に、本を提示するとよいだろう。
その場合、最低でも2D6週間を解読に要することになるため、〈図書館〉に成功すれば、1日で読め、〈オカルト〉が1ポイント上昇する本を発見させると探索者が喜ぶだろう。
また、〈図書館〉に成功した場合、この書斎の本には抜けが在る事に気づく。例えば、上巻はあるが下巻は無い、またはその逆などである。

書斎にいるふらんけんは黙々と本を読み進めており、自ら話しかけてくることはない。
探索者が話しかけた場合、快く会話に応じる。

ふらんけんが書斎にいる際に〈目星〉に成功した場合、ふらんけんのいる方向から視線を感じる。
その方向に目線を向けても、いるのは黙々と読書をしているふらんけんのみである。
※松谷の操り人形であるふらんけんは探索者を監視しています
※何らかの方法でふらんけんを欺けば、全く態勢を変えず、じっと探索者を見つめるふらんけんの姿を確認できます


客室
探索者達が宿泊する部屋は、快適そうなベッドにサイドテーブル、椅子と机などが置かれた洒落た雰囲気を感じさせる部屋だ。
埃などは一切積もっておらず、清潔に保たれている。この部屋には特に怪しい物はない。

ふらんけん、青坊主の部屋を調べた場合、それぞれの部屋には生活感が無く、荷物が転がっているものの使われている気配はない。
部屋では寝る以外の行為をしていないのだと感じる。ネコツキの部屋には大量のコスプレグッズが置かれているのみである。
〈目星〉に成功するか、荷物を広げて調べると、ふらんけんの部屋では車の鍵が、青坊主の部屋ではカメラが見つかる。
・車の鍵
遠隔でドアの開閉ができ、エンジンを始動させられるスマートキーである。
車のメーカーなどと照らし合わせれば、外に止まっていた少し古びた車であると分かる。
何者かにかじられたあとが無数についている。
それは、小動物ほどの口の大きさに見える。
※劣化ショゴスは機械に置き換わることはできないため、噛み傷をつけただけにとどまっています

・カメラ
最新式のデジカメ。丁寧に手入れされており、大切に使われていたことが窺えるが、無数の噛み跡がついている。
それは、小動物ほどの口の大きさに見える。
デジカメ自体は問題なく動作し、撮影した写真も確認できる。
写真は全てオカルトスポットを写したもので、日本全国様々な場所で撮影されている。
最後の写真は数か月前のもので、青坊主の自撮りである。このような写真はこの1枚しかない。
※劣化ショゴスは機械に置き換わることはできないため、噛み傷をつけただけにとどまっています


遊戯室
遊戯室では、青坊主、ネコツキ、藤田が楽しげに騒いでいる。
ビリヤード台やカードテーブルなどが置かれており、青坊主らはトランプで遊んでいる。
探索者達の姿を見ると、一緒の遊ぼうと楽しげに誘ってくる。
初めは穏やかだが段々と熱くなってくる青坊主や、負けると徐々に不機嫌になるネコツキ、大声を上げて騒いだり、ネコツキに気を使って声を掛けたりと忙しい藤田などが見られる。


寝室
松谷の実験室に続く部屋である。扉は鍵がかかっているのか開かず、窓は閉め切られているため中の様子はうかがえない。
〈聞き耳〉に成功すれば、中に何者かがいる事のみ分かる。
話しかけると松谷が出てくる。中の様子は特に特徴のない寝室に見える。松谷は、探索者を中に入れることは拒む。
寝室について藤田に聞けば、松谷は基本的には寝室から出てこないこと、ネコツキは時折食事を持って出入りしていることを話す。
なお、ネコツキや松谷が寝室に入る瞬間を見ても、鍵を使っているようには見えない。
探索者達がこの扉を触っても開かない。
扉が開かないことに気づいた場合、〈アイデア〉に成功すれば他の館の住人は鍵などを使用せずあっさりと扉を開けていたことを思い出す。
〈鍵開け〉や〈機械修理〉を試した場合、この扉は掛かっていないものの何故か開かないことに気づく。
※この扉は体を構成する劣化ショゴスに反応して開きます
※中に入ることができるのは、置き換えが進行している神野、ふらんけん、青坊主、ネコツキと劣化ショゴスを支配下に置いている松谷のみです
※藤田もこの扉を開けることができますが、松谷が洋館にいる間、彼はよほどの理由が無い限りは扉を触ることを拒みます


応接室
アンティーク調の見事な椅子とテーブルが置かれており、暖炉が暖かそうに燃えている。
夜の10時ごろになるとこの部屋にふらんけん、青坊主、ネコツキ、藤田らが集まり12時ごろまでオカルト話に花を咲かせている。
〈目星〉に成功すれば、埃などはほとんど見られず清潔なこの館において、暖炉の周りには埃や汚れがあることに気づく。
このことをネコツキに指摘すると、慌てた様子で掃除を始める。
※劣化ショゴスは炎に弱いため、暖炉周辺は置き換わっていません
※その結果、埃などが積もっても劣化ショゴスが食事によって掃除しないため、汚いままになります


食堂
大きなテーブルと、椅子が並んでいる。観葉植物の青々とした葉が食事に彩りを添えている。
〈知識〉の半分、または〈博物学〉に成功した場合、この種の植物が冬にこれほど綺麗な葉を見せていることは珍しいと気づく。
館の住人らは、ネコツキや松谷の手入れが素晴らしいと答える。
※実際は、劣化ショゴスによって観葉植物が置き換えられている


キッチン
飲食店の厨房のような立派なキッチン。広々としており、巨大な冷蔵庫が設置されている。
冷蔵庫の中身を調べた場合、残りの食材が少ない事に気づく。節約すれば明日1日分になるかどうかといった量だ。
また、冷蔵庫にも小動物か何かの噛み傷がついていることに気づく。
※劣化ショゴスは機械に置き換わることはできないため、噛み傷をつけただけにとどまっています
〈目星〉に成功するか、コンロのあたりを調べると、清潔な印象のこの館では珍しく汚れが目立つことに気づく。
※劣化ショゴスは炎に弱いため、コンロ周辺は置き換わっていません
※その結果、埃などが積もっても劣化ショゴスが食事によって掃除しないため、汚いままになります
※このキッチンで、松谷は劣化ショゴスを食事に混ぜ探索者達に摂取させています


神野の部屋(1階の客室)
部屋はその他の客室と同様だが、明かりがつけられておらず薄暗い。
その中で、机に向かってカリカリと何かを書きつづけている男がいる。彼こそが神野鈴彦である。
彼は話しかけられない限り、話すことはない。話しかけられた場合、上の空といった様子で曖昧な返事を返してくる。
しばらく喋りかけたり、原稿についての話をした場合、彼は振り返って話しかけてくる。
「すまないが……今、筆がよく進んでいるんだ……悪いが一人にしてくれないか?」
探索者達が何らかの返事をすると、神野は更に続ける。
「いや、折角来てくれたんだ……よかったら、今書いている話を読んでみてくれないか? そうだ。それがいい
ここずっと何も書いていなかったんだ……ちょっと不安でね……」
そういって、神野は何枚かの原稿用紙を差し出してくる。

神野の原稿
あいうえお。かきくけこ。さしすせそ。たちつてと。なにぬねの。
はははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははは

原稿を渡すと神野は再び一心不乱に机に向かい始める。話しかけても帰ってくるのは曖昧な返事だけだ。
※神野は体のほぼすべてを劣化ショゴスに置き換えられており、元の人格も知性もほとんど残っていません
※彼は本来であれば死亡しているはずですが、他の人間を食すことによって生き延びています。


物置
洋館の歴史を象徴するかのように、様々な物が詰め込まれている。
以前の訪問者の忘れ物なども置かれており、〈幸運〉に成功すれば必要な物が見つかるだろう。


WC
特に何もない。

【深夜の目覚め】


その日の夜、睡眠をとっていた探索者はふと目を覚ますことになる。
それは、劣化ショゴスが探索者の荷物や探索者自身に置き換わろうとしている咀嚼音によるものだ。
眠っている探索者は全員〈聞き耳〉による判定を行う。判定の成否にかかわらず、全員が目を覚ます。
「あなたはふと目を覚ました。静寂な山奥には一切の物音が無く、この館も不気味なほどの静けさに包まれている。
何故目を覚ましたのか。疑問に思ったあなただったが、それはすぐに解決された。
くちゃくちゃくちゃ。奇妙な咀嚼音があなたの荷物から響いている。
くちゃくちゃくちゃ。くちゃくちゃくちゃ。その咀嚼音は、あなたの荷物からだけではない。
耳を澄ませば、この部屋の至る所に響いている」
(聞き耳に成功した場合)
「しかしそれは、まるであなたが目覚めたことに気づいたかのように消えていく」
(聞き耳に失敗した場合、ハゲの場合は適当な何かに置き換える)
「くちゃくちゃくちゃ。あなたは、その音の源が自らのすぐ近くにもあることに気づく。
それは、あなたの頭髪だ。何か、名状し難いおぞましい何かが、あなたの髪を食しているのだ」
(この館で食事を取っていた場合さらに続く)
「くちゃくちゃくちゃ。そして、あなたは何故か自分があの咀嚼音を発していたことに気づく。
しかし、あなたは口を動かしてはいない。それは、あなたの口の更に奥。臓腑から響く音だった」
館に潜む何かに気づきSANチェック0/1D3、食事を取っていた場合は1/1D6、〈聞き耳〉に失敗した場合は減少値に+1。

探索者達が荷物や自分の身体を調べた場合、一切変化がないことが分かる。あれは幻だったのではないかと思わせるほどだ。
しかし、携帯電話など、一部の持ち物には小動物がつけたような噛み傷が残されていた。
※噛み傷が残るのは劣化ショゴスが置き換わることのできない機械類です。探索者達に質問された場合は随時判断して答えてください
※その他の物は、劣化ショゴスが完全に置き換わっているため違和感などありません
※ただし、劣化ショゴスは火に弱いため、置き換わった物品を炙るなどすれば溶けるように消えてゆきます
※のちの処理に影響するため、〈聞き耳〉に失敗した探索者を覚えておいてください

【地震】


翌朝、蠢くものたちの家を強い揺れが襲う。館も木々も、周辺の全てが激しく揺れ、立っていることも困難になる。地震だ。
しばらくすると揺れは収まる。不思議と家の物はあまり散らばっていない。
※ただし、劣化ショゴスによっての置き換えが進んでいないキッチンと、応接室の暖炉周辺は物が散らばっています
揺れが収まると、館の外で何か大きな音が聞こえる。見ると、探索者達の乗ってきていた車が地割れに飲み込まれている。
地割れはそのまま口を閉じていき、探索者達の車は地面に消える。
なお、この地震について調べても情報は出てこない。地震が観測されていないのだ。
※松谷が探索者達を返さないために、山地を構成する劣化ショゴスを操り地震を起こしました
※探索者が車を借りようとした場合、NPC達は鍵を無くしたなどと話し遠回しに断ります
※この地震や後述のネコツキの死の一連の流れは非常にオカルト的ですが、NPC達は興味を持ちません
※松谷に操られているためであり、探索者たちにNPCの異常性を気付かせるためでもあります

【ネコツキの死】


その後、松谷と神野を除いて、何事も無かったかのように皆は食堂に集まっている。
昨晩のことを聞いても、NPC達は口をそろえて何も聞かなかった、何も知らないと答える。
地震について聞くと、時々起るので慣れた、物が落ちないように対策もしてあると答える。
確かに、意識してみれば部屋の所々にそういった地震対策がされていることが分かる。
しばらくするとネコツキが食事を運んでくる。その後、「松谷さんと神野さんに食事を持っていく」と話し、彼女は食堂を出て行く。
彼女は、1人で神野と対面した際に食い殺されることになる。今回は探索者がついてくることもあると思われる。
その場合、後ほど「ネコツキがいつの間にかいなくなっていた」という状況を作ること。
それが難しい場合は、ネコツキ以外のNPCを犠牲者とするか、探索者が襲撃されるといった展開にしてもよいだろう。
彼女について行った場合、彼女は松谷の扉をノックして開き、食事を渡した後、神野の部屋でも同様の事をする。
松谷に話しかけた場合、「すみません。朝はどうも弱くて。昼食は食堂で取りますから、またお昼にお会いしましょう」などと答える。
神野は一心不乱に机に向かっている。彼女が1人で神野の部屋に入った場合は、下記につなげる。

ネコツキは、食事を渡しに行ったきり、あるいはどこかに向かったきり戻ってこない。
応接室や遊戯室、書斎、彼女の部屋にも姿は見えない。彼女が失踪しても、青坊主とふらんけんは特に気にしていないように見える。
彼らはいつもと変わらず、書斎や遊戯室にいる。藤田は彼女を心配しているようで、館を探し回っている。
〈聞き耳〉に成功するか、神野の部屋の前を通ると、ぐちゃぐちゃという、何かを貪るような音が聞こえる。
神野の部屋に入ると、そこには何かを貪る神野と、バラバラになったネコツキがいる。
「ゼリー状の何かが散らばる部屋の中央に男が蹲り、何かを貪っている。その男は、神野鈴彦その人だった。
彼の身体は、ぼこぼこと泡立ち、皮膚の下で何かが激しく蠢いている。散らばる何かを食すほどに、蠢きは激しさを増した。
部屋に散らばるそれは、人体をそのままゼリー状にした何かとしか言い表しようがなかった。
内臓が露出し、胴体から引きちぎられた腕が2本転がっているが、出血は無く、血の匂いすらしない。
床に転がっている頭部はネコツキそっくりだが、あなた達には奇妙なほど似通った作り物に見えた。
しかし、床に転がるそれは、あのネコツキの声で口を開く「じんのせんせえ……」と」
ネコツキの死体と、それを貪る神野にSANチェック1D3/1D8

神野は、探索者達を確認すると「俺は消えたくない……死にたくないんだあ……」と言い襲い掛かってくる。
神野鈴彦との戦闘開始。

神野鈴彦 - 蠢くもの
STR12 CON13 DEX9 SIZ14 INT15 HP14 DB+1d4
組みつき 50% 体に喰いつかれ、毎ターン1D6ダメージ。STR対抗で逃れられる。
こぶし 50% 2D3+1d4
1ポイントの装甲
ラウンド毎に1点のHPを回復

DEX対抗などでその場から逃げ出すと戦闘は終了する。
部屋から出た神野は、同じく部屋から出てきた松谷と鉢合わせると、動きを止め体をどろどろに溶かすためだ。
この場合、部屋に残るネコツキの身体も溶けて無くなる。
この光景を目撃した探索者はSANチェックを行う。
溶けた神野を見てSANチェック0/1D3

神野を倒した場合、彼の身体はネコツキと同じようにバラバラになり床に転がる。
神野の身体も、ネコツキの身体も、破片それぞれが思い思いに蠢き、部屋を移動している。
彼らの頭部もまた、「死にたくない……」や「おそうじ……おそうじ……」といった言葉を発しているが、しばらくすると動かなくなる。

神野の部屋を調べた場合、机には大量の原稿がある。(「蠢くものたちの家の探索」を参照)また、机の引き出しから車の鍵が見つかる。
大量の原稿の山を探ると、「研究日誌」と書かれた手書きの書物が見つかる。
研究日誌を神野の死亡前に発見することは難しいだろう。原稿を書き続けている彼は机から動かず、他人に原稿を触れさせようとしない。
なお、研究日誌の筆跡を神野の原稿と比べた場合、筆跡は一致しない。
車の鍵は、メーカーなどを照らし合わせれば最も古びた車の物だと分かるだろう。
研究日誌
1921年 5月
よい実験場を手に入れた。利用した男は研究材料にした後処分することにする。
1921年 7月
奇跡的に最高の実験素材を手に入れた。非常に強い生命体であり、不老不死に大きく近づくだろう。
入手先では、ショゴスと呼ばれていた。
1921年 9月
この生命体は反抗的である。僅かな体しかなく、ろくな知性も維持できていないだろうに、こちらの指示に従わない。
この個体の徐々に生命力が失われてきている。急がなければ。
1923年 2月
ショゴスを特殊な液体につけることで完全に拘束すること共に生命を維持することに成功した。研究を続ける。
1924年 5月
反抗的な意志を奪った個体の培養に成功した。続けて、細胞の万能性を利用した置き換え実験を行う。
1924年 9月
培養した生命体にはいくつか弱点があるが、まさか炎への耐性が逆転し、弱点となるとは。
無機物への模倣は複雑なもの、例えば機械などを除きほぼ完ぺきに行えるようになった。
続けて人体の置き換えを行う。
1924年 10月
培養個体を摂取後、一週間が経過すると男は眠りについた。
一か月後、目覚めた男は身体の一部が完全に培養個体へと置き換わっていた。
その後、すさまじい勢いで身体が変化し、完全に培養個体に食い尽くされた。男を処分した。
1926年 11月
大元となったショゴスを介して電気信号を送ることで、培養した個体を操ることに成功した。
彼らは、別の物に置き換わった後でも同じ個体を識別する力がある。これは、何かに応用できるだろう。

※彼は、この研究日誌を読むことで他人を食い生きながらえることを思いつきました
※松谷はそのことに気付いていましたが、実験の一環として見逃していました

【蠢くもたちの家の探索2日目】


神野とネコツキの死後、松谷は悲しそうに「こんなことが起こるなんて……神野さん……ネコツキさん……」と呟いている。
その様子は2人の死を悼んでいるように見える。とはいえ、この段階でPL達には松谷を怪しませた方がいいだろう。
探索者達には不自然さなど違和感を持たせるようにするとよい。
青坊主やふらんけんは何事も無かったかのようにしており、昼食を済ませた後はそれぞれ書斎と遊戯室に向かう。
藤田は今回の出来事に酷く動揺しているようで、探索者達と共に行動しようとする。
※警察を呼んだ場合、松谷が土砂崩れを起こして道をふさいでしまいます
※もしくは、松谷が死体を消滅させ証拠を隠滅します

蠢くものたちの家の様子は、基本的には前日と変化していない。
変化しているのは、神野とネコツキがいなくなったこと、藤田の心に動揺が広がっていることだ。

この段階で探索者達が行うべきことは、松谷の実験場を突き止め、彼女の悪事を止める事である。
彼女の寝室を調べるためには、彼女を寝室から離したうえで、寝室を開ける必要がある。
そのための方法はいくつか存在するだろう。

1.彼女を寝室から離す方法
彼女はあくまでも洋館の「優しい女主人」を演じるため、探索者達の頼みごとをあまり断らない。
適当な理由をつけて誘い出したり、長話をすれば彼女を拘束することができるだろう。
また、劣化ショゴスに置き換えた人間を外に送ることや、まだ支配下にない人間を外に送ることを彼女は嫌っている。
そのため、食料の買い出しは彼女自身が行っている。キッチンの食糧が少ない事を指摘すれば、彼女は町まで買い出しに向かう。

2.寝室の扉を開ける方法
寝室の扉は、体内を占める劣化ショゴスの割合が一定以上であれば開けることができる。
そのため、藤田は扉を開くことができる。ネコツキと神野の死によって無意識のうちに支配に抵抗し始めている彼は、探索者達の説得されれば協力する。
その他、神野を倒していた場合は彼の部屋に転がっている腕を利用すれば扉を開くことができる。
また、劣化ショゴスの弱点である火を近づけ扉を溶かすことも可能である。
初日に夕食を取った探索者が2回以上睡眠をとった場合も同様である。
最後に、非常に乱暴な方法ではあるが館全体に火をつける方法もある。館を構成する劣化ショゴスの部分はすぐに溶けて無くなる。
残るのは、劣化ショゴスに置き換わっていなかった暖炉、キッチン周辺と機械類、そして寝室にある地下室へと続く扉のみである。
その場合、青坊主とふらんけんは焼死する。また、松谷がその場にいれば怒り狂った様子で襲い掛かってくるだろう。

寝室
大きなベッドに本棚、机と、最低限の物はそろっているが、一日の大半をここで過ごすには少し物足りなさを感じさせる部屋である。
松谷が車の鍵を使用していない場合、机を調べるか、〈目星〉に成功すれば車の鍵が見つかる。この鍵は、館前に停められている高級車の鍵だと分かる。
本棚には書斎以上にあったものよりもより貴重なオカルト本が並んでいる。書斎から抜けていた本もこちらで見つかる。
本棚を調べると、その中から手書きの研究日誌を発見する。更に何かを探して〈図書館〉に成功した場合、魔道書を発見できてもよい。
また、部屋の隅、目立たない部分に地下へと続く鉄製のハッチを発見する。この扉に鍵などはかかっていない。
研究日誌の筆跡は、神野の部屋に合ったものと一致する。

研究日誌
1940年 12月
実験は進まない。
1960年 12月
実験は進まない。
1980年 12月
実験は進まない。
2000年12月
今まで100名は処分しただろうか。実験は進まない。

地下室
ここは、松谷が100年近い歳月を費やしてきた実験場である。
黄色く、泡立っている液体に満たされた大きな筒状のガラス管が置かれており、そこから伸びる管も同様のガラス管に繋がっている。
ガラス管の中には、玉虫色をした小さな塊(ショゴス)が浮かんでおり、よく見ると無数の小さな目玉や口が浮かんでいる。
そこから繋がっているガラス管にも、似たような何かが浮かんでいる。その塊は玉虫色の物と比べ大きいが、灰色にくすんでおり、どこか未完成さを感じさせる。
地下室には実験台も置かれており、その上を調べれば先ほどの灰色の塊が置かれていることが分かる。
ただし、その灰色の何かは石、植物、そして心臓のようなものなど、様々な物に変化しつつある。
おぞましい実験場を見てSANチェック0/1D4

この地下実験場への侵入は、地下室にいるショゴス本体の電気信号により松谷へと伝達される。
松谷が買い出しに向かっていた場合は地下室を調べ終わった頃に彼女は戻ってくるし、どこかに引き止めていた場合は力づくでこちらへと向かってくる。
彼女は必要であれば魔術を使用するし、青坊主とふらんけんは彼女に操られ探索者達に襲い掛かる。
松谷がショゴスを破壊される前に地下へたどり着けるようにするか、少なくとも探索者と対面しているようにする必要があるだろう。

地下に青坊主とふらんけんを伴い現れた松谷は、怒りをにじませた声で探索者達に話しかける。それは、今までの彼女の様子からは想像できない姿だ。
松谷は興奮するにつれて、声はしわがれ、皮膚にはしわがにじみでてくる。
「貴様ら何をしている! 私は不老不死になるのだ! 誰にも邪魔はさせん。しばらくは楽しい思いをさせてやろうと思ったがやめだ。
オカルト好きをなど、世界の真実を知らぬ哀れな豚どもに過ぎん。せめて私の糧となるがいい!」

松谷との戦闘開始。同行していれば、青坊主、ふらんけんも襲い掛かってくる。
松谷は≪被害をそらす≫の呪文や、≪手足の萎縮≫を使用する。
青坊主とふらんけんは、体を不自然に蠢かせ、無数の口と目をその体に生み出すと襲い掛かってくる。
その姿は、もはや人間の物ではなく、神野と同じ化け物、蠢くものである。
蠢くものを見てSANチェック0/1D6

青坊主(永見 直人) - 蠢くもの
STR12 CON11 DEX12 SIZ17 EDU14 HP14 MP12 DB+1d4
組みつき 50% 体に喰いつかれ、毎ターン1D6ダメージ。STR対抗で逃れられる。
こぶし 50% 2D3+1d4
1ポイントの装甲
ラウンド毎に1点のHPを回復

ふらんけん(川崎 賢次) - 蠢くもの
STR11 CON12 DEX7 SIZ13 HP13 MP7 DBなし
組みつき 50% 体に喰いつかれ、毎ターン1D6ダメージ。STR対抗で逃れられる。
こぶし 50% 2D3+1d4
1ポイントの装甲
ラウンド毎に1点のHPを回復

戦闘中、蠢くものたちの弱点である火を利用した攻撃を行った場合、ダメージに+2D6する。
また、攻撃が命中した場合蠢くものたちは炎上し、ラウンド毎に1D6のダメージを与える。

この戦闘では、事態を収束させる方法が3つ存在する。
どちらの場合でも、劣化ショゴスが暴走した時点で、探索者達は血と灰色の塊を吐き出す。
※これは、探索者の身体を乗っ取れないまま外に現れた劣化ショゴスです
1.ショゴスを破壊する
劣化ショゴス達の維持、管理は、ショゴスを介して松谷が電気信号を送ることでなされている。
そのショゴスを破壊することで、松谷は劣化ショゴスの制御ができなくなる。
ショゴスを破壊するためには、ガラス管に6ポイントのダメージを与える必要がある。
制御から外れた劣化ショゴスは、ただただ無秩序に辺りを食い散らかす。
青坊主、ふらんけんは残った人間の部分を即座に喰い散らかされ、ばらばらに崩れ落ちる。
藤田も体中からぐちゃぐちゃといった咀嚼音を響かせ、腕がもぎとれる。もぎとれた腕はもぞもぞと蠢き、くちゃくちゃと喰い散らかされる。
松谷は劣化ショゴスの対処に追われ、動きを止めるが、探索者達が逃走しようとすれば怒りのままに妨害してくる。
探索者達にもその影響は及ぶ。辺りを埋め尽くす劣化ショゴスに喰われたくなければ、探索者達は直ちに脱出しなければならない。
脱出の方法は下記を参照すること。

2.松谷を気絶、あるいは殺害する
劣化ショゴスや青坊主、ふらんけんに命令を送っているのは松谷である。
彼女が意識を失うことで、彼らはその管理下から外れる。
同じく解放されたショゴスは、今までため込んだ人間の恨みを晴らすため、劣化ショゴスへ指示を出す。
辺り全ての劣化ショゴスが牙をむき、青坊主、ふらんけん、松谷は辺りに現れた無数の口、そして自らを構成する劣化ショゴスに食い殺される。
藤田も体中からぐちゃぐちゃといった咀嚼音を響かせ、腕がもぎとれる。もぎとれた腕はもぞもぞと蠢き、くちゃくちゃと喰い散らかされる。
探索者達にもその影響は及ぶ。辺りを埋め尽くす劣化ショゴスに喰われたくなければ、探索者達は直ちに脱出しなければならない。
脱出の方法は下記を参照すること。

3.ショゴスを破壊し、松谷を気絶、あるいは殺害する
1と2、両方の方法を実行するパターンである。
下記の脱出処理の際、最も脱出が容易になるだろう。

※ただし、藤田は蠢くものたちの家を訪れてから3日以上が経過していた場合は腕だけでなく体の全てを食い尽くされる

また、上記それぞれの処理の際、「深夜の目覚め」イベントで〈聞き耳〉に失敗していた探索者は、劣化ショゴスと化した頭髪が崩れ落ち、食いつかれる。
髪は短髪になる程度で、禿るわけではない。
この洋館で発見した物品を持っていた場合も同様である。〈幸運〉に失敗すれば探索者の所持品も置き換わっていたことになる。どの場合でも、1D3のダメージ。このダメージは累積しない。

【脱出】


探索者達は、崩れゆく蠢くものたちの家から脱出しなければならない。
脱出の処理は戦闘ラウンドによる処理で行う。
蠢くものたちの家から抜け出すには〈DEX×5〉に成功すれば1ラウンド、失敗すれば2ラウンドかかる。
館には無数の眼、口がくちゃくちゃと音を立てて現れ、毎ラウンド1D3のダメージを受ける。
なお、火を持てば劣化ショゴスは近づいてこなくなりダメージを受けない。
「1.ショゴスを破壊する」の手段を取っていた場合、松谷が≪レレイの霧の創造≫などの呪文で妨害してくる。
DEXの判定が〈DEX×3〉になる。
藤田は腕がもげており、痛みでその場に蹲っている。連れて行く場合はSTRと藤田のSIZの対抗ロールを行う。
藤田や気絶した探索者を連れている場合、〈DEX×X〉のXを-1する。STRとSIZの対抗ロールに失敗した場合はさらに-1する。

館を抜けると、辺りの至る所で土砂崩れが起きていることに気づく。山が、木が、そして地面全てが蠢き、探索者達へと向かっている。
そして、それらの全てがおぞましい口と眼を持っているのだ。
おぞましい光景を目撃してSANチェック1D3/1D8

この場から逃れるためには、車で脱出する方法が最も望ましいだろう。
停車している車は3種類あるが、スマートキーを利用しているふらんけんの車の鍵は劣化ショゴスに置き換えられていることに注意する必要がある。
劣化ショゴスに置き換えられた鍵を使用する場合、扉を開ける際と、エンジンを掛ける際、2度〈幸運〉に成功しなければ鍵は崩れ指に食いついてくる。1のダメージ。
KPは、探索者達が時間を掛けるなら劣化ショゴスに食いつかせ適当なダメージを与えるとよいだろう。

車に乗り逃げる場合、〈運転〉による判定を行う。成功すれば、巧みなハンドルさばきで迫る化け物を避け、町までたどり着く。
失敗した場合、道中で化け物の奔流に飲まれ、車は横転して山地を転がってゆく。探索者達は1D6ポイントのダメージを受けるが、町までたどり着く。
この際、「2.松谷を気絶、殺害する」の手段を取っていた場合、劣化ショゴス達は明確に探索者達に向かってくるため、〈運転〉に-20する。

車を動かせなかった場合、その場で耐えることになる。炎を絶やさなければ、劣化ショゴスに襲われることはない。探索者達がどれほどの準備をしていたかで生死が分かれるだろう。
車の中に立てこもった場合、化け物に打ち付けられ車は山を転がり落ちてゆく。1D10のダメージ。
ただし、あたりの山地はおぞましい勢いで崩れてゆく、探索者達は足元が急速に下に落ちてゆくほか、化け物に囲まれた恐怖からSANチェック
また、地面に打ち付けられる痛みで1D6のダメージ。
化け物に囲まれた恐怖からSANチェック1/1D6
発狂した場合、炎を取り落してしまう可能性がある。

町までたどり着くか、炎に頼りその場で耐えきれば、生還となる。
蠢くものたちの家があった山地は消え去り、地面には深い大穴が残る。この大穴は、地下の深く、どこまでも続いている。
この事件は原因不明の超自然災害として扱われ、オカルトマニアを騒がせることになるが、真実を知る探索者は騒ぐ気にはなれないだろう。

【シナリオエンド】


生還で1D10の正気度回復。「3.ショゴスを破壊し、松谷を気絶、あるいは殺害する」の手段を取っていた場合、1D6の正気度回復。
藤田を救出した場合、1D6の回復。