どどパークの結末 - Cthulhu Scenario Storage|クトゥルフシナリオストレージ

どどパークの結末

【このシナリオについて】


シナリオ傾向:シティ、現代
推奨人数:1人~
戦闘:なし
推定プレイ時間:2~3時間
難易度:ひくめ
システム:クトゥルフ神話TRPG

【あらすじ】

1850年に開園し、現存する中で日本最古の遊園地ともいわれ愛される「どどパーク」。
多くの思い出を生んだその遊園地は、施設の老朽化や来園者の減少などでついに閉園を迎えることになった。
しかし、閉園を阻止すべく「どどパーク」に潜むモノが起こす騒動に探索者達は巻き込まれる。

【シナリオについて/舞台設定】

火星に潜む植物のようなグレート・オールド・ワンであるヴルトゥームは、地球に手を伸ばすため自身の一部である種子を飛ばしていた。
日本に落ちたその意思ある種子は、強い幻覚性の芳香を発して人々を魅了しある地方に一面の花畑を作った。
その勢いのまま日本すべてを飲み込むかと思われたが、ヴルトゥームの芳香に耐性を持つ一族が現れ花畑を管理することで魔の手が広がることは無くなった。
時は過ぎ、その花畑は遊園地である「どどパーク」の一部となっている。
過去の危機も忘れ去られ、「どどパーク」の設備の老朽化や来園者の減少による閉鎖と共に花畑も消えることが決まる。
花畑の花たちは、滅びを避けるため訪れた人を特殊な香りで洗脳し、洗脳された人々は閉園を阻止するデモを始める。
探索者達は花たちが騒動の黒幕であることに気づき、これを収めることになる。

■どどパークについて
1850年に開園した現存する中で日本最古の遊園地。
長く人々に愛され、ピーク時は年間150万人を超える来場者が訪れていた。
趣向を凝らしたアトラクションはもちろん、開園前から存在した立派な花畑やその花を用いて作られた人形展などで話題を生んだ。
しかし、施設の老朽化が進み、人形展も時代の変化や技術者の減少で無くなったほか、県内に大規模テーマパーク「ココ・ランド」も開園。
人気の陰りは止まらず現在の来場者は年間10万人ほど。経営の立て直しも見込めず閉園が決まっている。

【資料】

ヴルトゥーム MM147P
火星の洞窟の奥深くに潜む植物のような姿をしたグレート・オールド・ワン。
あらゆるものを見聞きする知覚能力に加え、半径1.6kmのものと精神的な会話を行う能力、幻覚を見せ奴隷を作る能力など、多くの通常ならざる感覚と能力を持つ。
本シナリオに登場するのはその落とし子のようなもので、能力は大きく弱体化している。

NPC
岡田優一 56歳
どどパークの園長。痩せぎすの疲れたような印象の男。
親から受け継いだどどパークのため粉骨砕身で尽くしていたが、経営を立て直すことはできなかった。
閉園を発表したとたんに現れたデモ隊により更に精神をすり減らしている。

中原花子 75歳
どどパークの花畑の管理者。
優し気な見た目で、老いた体を懸命に動かし花の世話をしている。
その技術は一級品で、世界的な植物園からヘッドハンティングを受けたこともある。
人があふれていた頃のどどパークや人形展のことをよく覚えている。
花畑の花たちが神話生物であるヴルトゥームの流れを汲んでいることにはまったく気づいていない。

小松竜一 28歳
過去、ヴルトゥームによる地球侵略を阻止した一族の最後の1人。
長く花畑を管理していた小松家は、花たちが神性を失いつつあることに気づくと土地を売却し静かに暮らしていた。
小松の祖父まではどどパークで行われる花人形展の技術者として関りを持っていたが、それも途切ている。
小松竜一は親の遺産で遊んで暮らしているが、その遺産も尽きかけている。

一族としての力は依然として健在で、花たちにも惑わされず、精神的な会話を行うこともできる。メンタルも強い。

【導入】

探索者のうち1人はどどパークの園長である岡田優一と親しい関係である必要がある。
友人や親族など、岡田に頼られるような関係性であればなんでもよい。
岡田と親しい探索者は、ある日岡田に呼び出される。岡田は年齢以上に老けたようなひどく疲れた様子。
探索者に出会うと、真っ先に頭を下げて「助けてくれ!」と頼み込んでくる。
事情を聴くと、どどパーク閉園の経緯や、閉園を発表したとたんにデモ隊が現れ遊園地を占拠され途方に暮れている旨を話す。
デモ隊とはいえ客として訪れているためか警察も動かず、どどパークのために私財を使い果たし頼れるものは探索者達しかいないという。
岡田は唐突に表れた熱心なデモ隊を操っている何者かがいると考えており、探索者にその存在を探ってほしいと話す。
どどパークの運営は多少客が増えたところでもはや限界で、閉鎖を取りやめることはもはや不可能である。
重なった赤字による負債も多く、地元の銀行に土地も抑えられており住宅地や商業施設が建てられなど再開発計画が決まっている。
「今まで何ともなかったのに、閉鎖を発表したとたんに何故……、もっと早く助けてくれていれば……、いや、私は大切なお客さんになんてことを……」と岡田は参り切った様子でつぶやく。
とにかく実態を見てほしいということで、岡田は探索者達分の年間パスを渡す。
また、ちょうど探索者達がどどパークを訪れる日に、なんとかデモを鎮められないか閉園のあいさつを行ってみると話す。

【どどパーク】

どどパークのかなりの広さで、以前は多くの人々が訪れていたことが十分にわかる。
しかし、かつては立派だったであろう入場ゲートはさびつき、どどパークの看板は傾いて今にも崩れそうになっている。
看板の周りには色とりどりの電球がついており、かつてはキレイにフラッシュしていたことが分かるがもはや動きそうにない。
閉園を惜しんだ人も多いのか、客足はそこそこあるが混雑するほどではない。
いくつもある入場ゲートのうち稼働しているのは一つで、疲れた様子の40歳頃の受付嬢がチケットをもぎっている。

中に入ると、入り口周辺に「どどパーク」と書かれた灰色のパーカー(どどパーカー)を着た集団がいることに気づく。
彼らは「どどパークをなくすな」などと書かれた看板を抱えており、口々に「岡田は責任を果たせ」「みんなの思い出を奪うな」などと抗議を行っている。
来園者の邪魔をする気はないようで、近づけば道を譲るし、困っている様子なら「案内しましょうか?」などと話しかけてくる。
彼らは皆どこか恍惚とした表情を浮かべており、話しかけると探索者達を取り囲み、どどパークを心から愛していて無くしてほしくない、という主張を繰り返すだけである。
老若男女問わずいるデモ隊が、皆同じ恍惚とした表情で岡田を批判しどどパークへの愛を語る姿は異常で、怖気が走るものである。

【アトラクション】

どどパークには多くのアトラクションがある。ほとんどは老朽化により閉鎖されているものの、残ったアトラクションを探索者達も楽しむことができる。
どのアトラクションにもデモ隊の面々がおり、恍惚とした表情でアトラクションを楽しんでいる。
基本的に情報は無く、遊園地気分を楽しんでもらうほか、どどパークは再起不能だと伝えるためのもの。
「ジェットコースター」、「ふれあい動物園」、「コーヒーカップ」、「観覧車」、「ステージ」、「花畑」がある。

「ジェットコースター」
一時は話題を生んだ木製のコースター。ギシギシと揺れるスリル満点さで人気を博した。
現在は老朽化が進み、崩れるのではないかという揺れがあり命の危険を感じるレベルのスリルを体験できる。
乗る場合、〈幸運〉に失敗すると激しい揺れで体を打ち1のダメージ。搭乗者全員が失敗した場合脱輪してしまい1時間ほどレール上に取り残される。
ジェットコースターを見て〈機械修理〉に成功した場合、乗るとケガをする恐れがある状態だと分かる。

「ふれあい動物園」
年老いたヤギが何匹かいる。ヤギはほとんど動かず、餌をあげられるようだが満腹になっているのか飽きているのか見向きもしない。

「コーヒーカップ」
音楽とともにコーヒーカップが回る。ハンドルでカップを回転させることができるが、錆びついておりほぼ回らない。
軽快な音楽と思われる曲は老朽化したスピーカーのせいか不気味な旋律に聞こえる。

「観覧車」
かつては日本最大の観覧車で、美しい塗装とイルミネーションで話題になった。今は見る影もない。
いくつかのゴンドラが欠けており、一定の速度ではなくギシギシと不気味なリズムで回転する。高さ自体はあるためスリル満点。
頂上からはどどパークが一望できる。ほとんどの施設が老朽化しており物悲しい雰囲気であるが、唯一色とりどりの美しい花畑が目を引く。

「ステージ」
1000人ほどが集まれそうな観客席と、その先に小さなステージがある。以前はヒーローショーやイベントなどでにぎわっていたようだが、今は何も行われていない。
デモ隊が集まっており、「きょう岡田が来るらしいぞ」「やつにこの遊園地のすばらしさを教えないと」などと話している。

「花畑」
どどパークの一角にある大きな一面の花畑。レンガの道が続いており、その周りに段々になった花畑が広がっている。
レンガ道や柵は古びているものの、様々な種類の花が規則正しく並び、美しく咲き誇る様は圧倒的。
〈博物学〉や〈地質学〉に成功した場合でも、一般的な種であることが分かる。専門施設などで研究できれば既存の品種とは僅かに遺伝子の組成が異なることが分かる。
当たりにはどこか落ち着くような香りが漂い、来園者も多くみられる。
1人の老婆のスタッフ、中原花子が熱心に花の世話を焼いている。話しかけた場合、仕事があるからを早めに会話を切り上げるが、以下のことが聞ける。
・ここの花は1人ですべて世話している。土がいいのか何とか1人でも世話できている。
・江戸のころから美しい花畑が広がっていたそうで、昔は花をめぐって争いもあったらしい。

【閉園のあいさつ】

夕方ごろ、どどパークにアナウンスが流れる。
おそらく受付にいた女性と思われる声で、内容は園長である岡田による閉園のあいさつが中央のステージで行われるというもの。
なお、この閉園のあいさつについては岡田にあいさつを辞めさせることは難しい。
彼は曲りなりにもどどパークを愛してくれているデモ隊に対して、しっかりと説明し理解してもらいたいと考えている。
このあいさつの中で岡田が花畑に攫われることになるが、よほどうまく説得してあいさつを辞めさせた場合は岡田は深夜等にデモ隊に攫われ花畑に連れていかれる。
その場合、探索者達には岡田から助けを求める連絡が入る。

ステージにはデモ隊が大量に押しかけており、1000人ほど収容できるであろう観客席はすべて埋まっている。
彼らは「岡田ー!」と声を上げ、口々にどどパークを存続させろと主張している。
しかし、岡田が話し始めるとデモ隊は急に静まり岡田の話を聞き始める。
先ほどまでの喧騒が嘘のように静まり、何を見ているのか分からない恍惚とした表情を浮かべた顔がステージのほうに向けられる様は異様である。
ステージに上がった岡田も異様な雰囲気に気圧され弱気の表情を浮かべるが、深呼吸すると丁寧に、力強く話し始める。
どどパークの地は元々一面の花畑だったこと、そこから徐々に遊園地として規模を広げていったことなどどどパークの歴史から、
一時の大盛況の様子、しかし、施設の老朽化や競合の遊園地なども現れ経営に苦労したことなど、岡田は涙ながらに話を続ける。
デモ隊は静かに聞き入るが、ついに岡田が「どどパークの存続は不可能である」と話したところで全員が立ち上がる。
彼らは「この恩知らずが!」「もう花畑をみせてやる」「私たちのどどパークのため死ぬ気でなんとかしろ」などと口々に言い全員がステージに駆け寄っていく。
老若男女問わず、全員が立ち上がりステージへと駆け寄る姿は、とても正気とは思えない様相である。
1000人のデモ隊はとても止められるものではなく、岡田はあえなく飲み込まれる。
しばらくすると、岡田を担ぎ上げたデモ隊は花畑のほうへと行進していく。
岡田はしばらく抵抗していたが、抵抗するたびに痛めつけられ、あざが増えていきやがて抵抗を諦める。
デモ隊は花畑を荒らさないよう、徐々に人数を減らし花畑に近づいていき、抵抗を辞めた岡田をゆっくり花畑の中に下す。
探索者達もデモ隊が減ったことで岡田に近づいていくことができる。

花畑におろされた岡田は、痛々しそうな姿であたりを見渡すと、「確かに美しい花畑で、手入れしてくれている中原さんには本当に感謝しているが、これだけでは園の存続は……」と話す。
しかし、辺りに甘い香りが漂ったかと思うと、岡田は急に話をやめ、目を見開き、口からよだれをたらし動きを止める。花畑が見える位置にいる探索者達はPOW18との対抗ロールを行う。
成功した場合は、この花畑にいることが非常に心地よく感じ、ぼーっとしてしまう。
失敗した場合は、花たちにより幻覚を見せられ、洗脳を受けることになる。その探索者の視界に花以外なにも映らなくなる。日が暮れかけているにも関わらず、辺りは明るい。花が異常なほどに輝いているのである。
その中で、探索者は空中に巨大な球根植物が浮いている姿が見える。青白く膨らんだそれは、幹から枝状に分かれた無数の根を持っている。
幹の頂点には途方もなく大きな花のように朱色の萼がついていて、その中央には真珠色の素晴らしく美しく均整の取れた体つきの、まるで妖精のような姿をした何かが生えている。
そして、POW対抗の成否にかかわらず、探索者達の心中にこの花畑を全てを投げうってでも守り広げなければならないという思いが湧いてくる。自分の意思がどんどんと飲み込まれていき、自身が消えていきそうな感覚を覚える。

幻覚と洗脳によりSANチェック POW対抗に成功した場合は1/1D6、失敗した場合は1/1D10

そのまま倒れ伏し何かに飲み込まれるかとおもった探索者達だったが、突然冷たい水を掛けられ意識を取り戻す。
探索者達が分かれていた場合は、岡田に一番近い探索者達に水がかけられる。
水やり用のホースを持った中原がおり、岡田と探索者と水をかけたようである。
※中原は長年花の世話をしていることから、花たちから敵だと思われておらず洗脳も受けません
「あんたら、急にどうしたんだ。目を覚ましなさい」と話す中原だが、その声をかき消すように岡田が大声を上げる。
「私が間違っていた!」と涙ながらに声を上げデモ隊の面々と抱き合うと、「この命を賭してでもどどパークを存続させる」と高らかに宣言する。
皆恍惚とした表情でそれを受け入れ、辺りは大きな拍手の音に包まれる。岡田は今までの疲れ切った表情が嘘だったかのように目をぎらぎらと危うく輝かせ、デモ隊に囲まれながら去っていく。
水をかけてもらえなかった探索者がいた場合、岡田と同様に使命感に駆られデモ隊と共に去っていこうとしてしまう。
正気に戻すには〈精神分析〉や水をかける、頬を張るなどの行動が必要。
※花による洗脳は、精神が弱っていない限りは罹った直後に刺激が与えられれば解けるという設定です

岡田は探索者達が話しかけても相手をせず、「どどパークのために全てを投げうって死力を尽くす。本当に死ぬ必要があるなら死ぬ覚悟だ」と去っていく。
その場には探索者達と腰を抜かした中原のみが残る。

岡田はその後、どどパークの再建のために甲斐甲斐しく働き、探索者達が事態を解決しなければ最終的には借金を重ねやがて過労死する。

【中原の話】

岡田たちが去った後、しばらくすると中原は立ち上がり探索者達に話しかけてくる。
「あれは、一体なんじゃ……。あんたらは大丈夫か? 岡田さんはどうなったんじゃ……」と戸惑った様子を見せる。
彼女は先述の「アトラクション」の「花畑」に記載の内容以外には花畑について特に何も知らず、探索者達が見た幻覚についても知らない。
しかし、「小松の爺さんなら何か知っとるかも」と話す。
小松さんとは、小松 敬という名の花人形の技術者で、以前はどどパークに勤めていたという。
中原は小松にここの花について教えてもらっていたこともあるそうで、何年か前に亡くなったが、昔はよく子供を連れてきており、その子なら何か知っているかもと教えてもらえる。
聞けば小松 敬が住んでいた屋敷の住所も教えてもらえる。

【小松の一族】

小松 敬については、地元の図書館などで〈図書館〉に成功するか、中原に住所を教えてもらい周囲で聞き込みをすれば分かる。
元々ここ当たりの大地主であった小松家や、花人形の数少ない技術者だった小松 敬の情報はこの町であれば簡単に見つかる。
屋敷自体は売り払われており、今は駐車場になっている。
中原の話通り、数年前に小松 敬は老衰で亡くなっている。息子の小松 健司も花人形の技術者だったが、彼も敬の死後ほどなくして事故でなくなっている。
また、孫の小松 竜一がこの町で暮らしていることが分かる。住所についても、地道に聞き込みを続ければ突き止めることができるだろう。

小松家についてや花畑について〈図書館〉で調べた場合は、さらに次のことが分かる。
小松家は江戸のころからこの辺りの名士のような役割をしており一帯の土地を所有していたこと。
300年ほど前、当時は枯野だったどどパークの土地が突然花に覆われたこと。その花をめぐって人々の間で大きな争いが起きたこと。
小松家がそれを収め、以後花畑を管理していたことなどが書物に記されている。
小松 竜一についても、資産家として色々活動しているようで、地元の新聞などには時折名前が出てくる。
住む場所などもなんとなく特定できるだろう。

【小松 竜一】

小松竜一は小奇麗なマンションの一室に暮らしている。
今や天涯孤独の彼は資産家として自由気ままに生きている。
探索者達が訪ねた場合、暇をしていた彼は快く招き入れてくれる。

祖父や父について尋ねた場合、いい人だったことと、花人形の技術者としてどどパークに協力していたことを話す。
花畑については、特に何も知らず見たこともないと話す。幼いころから花人形の技術を継ぐのが嫌で避けていたという。
祖父も父も無理に継がせようとはしなかったらしく、祖父も何が大丈夫だったのか分からないが、「もう大丈夫だろう」と話していたという。
※祖父である小松 敬はどどパークの花たちがその力をなくしつつあることに気づいており、小松家のものがもうかかわらなくとも大丈夫だろうと考えました
※小松 敬の考えは正しく、息子である健司の死、どどパークの閉園などいくつかの予想外の事柄が重なったことが不幸でした
※小松家の屋敷が打ち壊された際に関連する資料などはすべて処分されています

竜一は花畑について覚えていることは無いが、探索者達にわざわざ来てくれたから、と1つの話をしてくれる。
祖父も父も花人形の技術者としていやっていけたのは、どどパークの花の声が聞けたからだという。
「花の声が聞ける」というのどういう意味か分からないが、案外本当に声が聞こえていたのかも、小さいころに祖父が持ち帰った花がしゃべった気が俺もしたんだよな、と竜一は笑う。

竜一を花畑に連れいこうとする場合、彼は花はあまり好きじゃないと渋る。連れていきたければ〈交渉技能〉に成功する必要がある。
どどパークの花畑を訪れた竜一は、ふと立ち止まると「声が聞こえる……」と呟く。あたりをきょろきょろと見渡すと、1つの花に顔を近づけ、熱心に頷き始める。
やがて、「それは辛いなあ、死にたくないよなあ、ごめんな……」と涙を流し始める。竜一によると、ここの花はみな意思があるという。
竜一は花から聞いた話として、昔、小松家の人間が世話をする約束をしていたがいつのまにかいなくなってしまったこと、さらに、どどパークの閉園と共に花畑が無くなることに激怒していることを話す。
彼は洗脳などはされていないが、どどパークの花々と交信したことで博愛主義に目覚めている。
彼は花を世話する中原に涙を流しながら近づき、今までの感謝を伝える。中原は戸惑いながらそれを受け入れる。

しばらくすると落ち着いた竜一は、探索者達に話があると花畑から離れたところに呼び出す。
彼は、花畑の花たちがこのままだと何をしでかすか分からないと話す。
はっきりとした意思はないようだが、「死にたくない」という意思を皆持っており、それに基づいて人々の洗脳をしているようで、
このまま取り潰しなどがあれば多くの人が亡くなるかもしれないというのだ。
彼は自分が今まで逃げていた責任があるとし探索者達に協力すると話す。たとえ花畑を無くすような決断を探索者がしても、竜一は、人に害を与えるならしょうがない、俺が最後まで見守ってやる、と涙ながらに応じる。

【決断】

探索者達はある程度情報を集めればこのどどパークの花畑がすべての元凶であるということが分かるだろう。
花畑に対してどのような対処をするか、探索者達は決めなければならない。
どのような形であれ、花畑の花たちが消え去るか、どどパークの閉園後も残り続けることが決まれば岡田をはじめとした人々の洗脳は解ける。
方法は自由であるが、本シナリオとしては以下の設定が用意されている。

・花々の洗脳能力について
どどパークの花畑の花たちは、周囲にいる人間にその甘いにおいをかがせ幻覚を見せることで洗脳することができる。
においをかがないようにすることで新たな洗脳を防ぐことができる。
洗脳された場合、その際に与えられた目標に向かって行動し続けることになる。「どどパークを存続させる」など。
花々の知能はそこまで高くないため、場当たり的な対応になることも多い。

・花々の対応について
自身に危害が加えられると感じた場合、花畑の花々は探索者も含めて周囲の人間を洗脳して阻止しようとする。
精神が弱っていない限り、洗脳直後であれば刺激を与えられれば洗脳は解けるが、火をつけてすべて燃やす、といった選択肢はよほど策を練らないと難しいだろう。
ただし、洗脳は人間にしか効果がない。例えば、ヤギを放って花を食べさせる、といった作戦をとった場合花は抵抗することができない。

・デモ隊について
どどパークの花々に「どどパークを存続させる」と洗脳された彼らは、一心に抗議活動や売り上げへの貢献を続ける。
彼らは毎日どどパークを訪れ、営業時間中はずっと居座る。営業時間中は下手な行動を起こすと彼らに阻止されるだろう。

・どどパークの警備について
夜間は何名かの警備員と、デモ隊の中にもどどパークのためと勝手に侵入して警備を行っているものが何名かいる。
探索者達が夜間にどどパークに忍び込みたい場合、適切な技能に成功するか、中原など従業員の協力を得る必要がある。
また、どどパークパーカーを着込めばデモ隊の目を多少ごまかせる。
中原は、探索者達が花に危害を加えないと思えば協力する。

・どどパーク跡地の再開発計画について
調べれば、住宅地や商業施設などが建てられる計画であることが分かる。
花畑に影響を出さず開発を行うことも難しいようで、今の計画のまま再開発が行われれば花畑はなくなる。
再開発計画には竜一のコネを使い関与することができる。
それなりの出資が必要になるが、花畑を残すためなら竜一が全資産を投げうってでも協力してくれる。
ただし、花畑を残すにしても移設するにしても、計画を変更するためには、最終的には探索者が交渉技能に成功する必要があるだろう。
どのような計画にするかは、資金も用意でき交渉にも成功すれば探索者の思い通りにしてよい。

【シナリオクリア】

岡田らデモ隊の洗脳が解けた時点でシナリオクリア。1D6の正気度回復。
開園最終日のどどパークには、閉園を惜しんだ人々が押しかけかつての盛況を思い出させるような賑わいぶりになる。
元デモ隊のボランティアで一部アトラクションも復旧しており、文句なしに楽しい遊園地となっている。探索者達も〈機械修理〉などに成功すれば手助けすることができる。
あちこちで笑い声が上がり、最後には花火があがり、別れを惜しむ言葉や感謝の言葉を掛けられながらも長い歴史に終わりが告げられる。
どどんとふさん本当にありがとうございました。

花畑を残すことに成功した場合、竜一は探索者達に大きく感謝し中原と共にこの花畑を守って暮らすと話す。花々も満足しているという。

洗脳が解けた岡田は粛々とどどパークの清算を進める。
一時は何も残らないかと思われたが、デモ隊の騒ぎのせいか予想外の売り上げがあり、なんとか暮らしていけるほどの金は残る。
憑き物が落ちたかのような晴れやかな顔で、彼は静かに余生を過ごしていく。